第79話 第四一回帰還事業団統括会議
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象の住民グループの代表の中でも異彩を放っていると、ザーレシャーク中尉は話している。
「……では、全員集まったようなので、会議を開会したいと思います」
この会議室の中で、一番やる気のない声で議事進行を始めたのが、地域社会開発委員会の副委員長であるロイヤル=サンフォード代議員……だった。後退した白髪頭に眠そうな目はそのもので、この会議に対する熱意は全く感じられない。原作でも『政界の力学がもたらす低級なゲームの末、漁夫の利益を得たと評されている』が、その評価は正しい。地域社会開発委員会の最高評議会における順列はあまり高くないし、この歳で副委員長ということは、まさに老境に差し掛かりつつある代議員がそれまでの議員生活を鑑みた功績としての名誉職に近い。ここから一〇年後に最高評議会議長になると言うのは、普通は想像しえない異例の出世だ。
それでも議長としての職責について理解がないわけではなく、淡々と言葉を続けていく。
「今日の議題は軍部より提出されました、エル=ファシル星系への住民の帰還運航および船団護衛計画についての可否についてです」
「議長!」
俺が手を上げるまでもなく、最初に声に出して手を上げたのはモンテイユ氏だった。俺の手が肩まで上がっていたのだが、僅差と見たのか、顔見知りだからなのか、サンフォード氏はモンテイユ氏を指名した。
「参加されているボロディン少佐にお伺いしたい。これまで軍部の方々はこの帰還事業に関して、あまり積極的にはご参加されなかった。今回急遽参加された意図をご説明いただきたい」
今までの軍部の不作為と職場放棄は一体どういうことかと、まずは問い質したいところだろう。面子を見る限りにおいては実務を担っていたであろう財務官僚としては、新たな闖入者ともいうべき俺の存在は不愉快であり、可能であれば排除したいと考えているのかもしれない。
「え〜軍部の代表はヴィクトール=ボロディン少佐、でいいのかな?」
一度原稿に視線を落とした後、その眠たそうな目を俺に向けてきたので、俺はにこやかな微笑みを作って頷き返すと、改めてサンフォード氏は俺を指名した。
「ご指名を頂いたのでお答えいたします。軍部といたしましてはこれまでエル=ファシル星系の奪回自体に力を尽くしてまいりました。作戦は成功のうちに完了し、既に戦場整理も完了しつつありますので、参加させていただいた次第です」
「作戦完了については八月に報告は受けている。少佐は宇宙暮らしが長いからご存じないかもしれないが、現在は一一月だ。既に三ケ月経過している」
「そうですね。そろそろハイネセンポリスのあちらこちらで落葉が見られるようになって、季節を感じられるようになりましたね」
まぁ嫌みの一つも言いたくなるのはわかるが、こちらも『次の作戦の為です』と応
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