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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第79話 第四一回帰還事業団統括会議
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中尉が一人、発言することなく黙って資料と議事録を回収する為だけに参加しているのが現状だ。

 そこに横紙破りで参加することになる俺は、まずは統合作戦本部『施設部』に在籍するその大佐に話を付けた。帰還事業に対する護衛任務を担当することになるので今後、第四四高速機動集団も会議に参加させてほしいと願うと、あっさり了承された。ヤンが同行することは勿論話していない。どうせ嫌みか非難しか言わず、苦労しかかからないが後で結果を報告してくれればいいと、いかにもめんどくさそうにその大佐は手払いで応えてくれた。

 そして当日。俺が地域社会開発委員会の席にヤンと一緒に訪問したことで、委員会ビルの小会議室はパニックに陥った。第四四高速機動集団ほか一名としか記載しなかったから不意打ちも同然だが、同行することになった施設部建築資材課運用係の老中尉、デニス=ザーレシャーク氏の心労は大変なものだったろう。

「英雄がいらっしゃるとなれば、こんな会議室ではなくもっと大きな場所をご用意いたしましたのに」

 ニコニコ顔で応対するのは特別法人代表のソゾン=シェストフ氏。大柄で恰幅もいい人物で、元エル=ファシル行政府の副首相を務めていた。それなりにリーダーシップがあると言われているらしいが、ヤン曰く『脱出計画の事前打ち合わせで会ったことがない』らしい。体格同様、鷹揚な性格に見えるが、目には狡猾さと計算高さがある。ちなみに会議の場を提供しているのはあくまで地域社会開発委員会であって、彼ではない。

「軍部の方からのご提案と伺ったのですが、まさかエル=ファシルの英雄がいらっしゃるとは。軍部もそろそろ本腰を入れていただけると考えてよろしいのでしょうか?」

 そう言ってヤンではなく俺を睨んできたのは、中央派遣官僚団の一応代表になるクロード・モンテイユ氏。財務委員会事務局総合政策課係長補佐を務めている。事業団の規模に比して些か職級が低いのが気になるが、こちらも少佐が来ているのだから大して変わらない。スマートな顔つきにキッチリと油で纏められたヘアスタイル。そして特徴的なカモメ眉に、根性の座った鋭いグレーの目は見覚えがあるどころではない。

「お久しぶりですなぁ。ヤン……少佐でよろしかったんですな。軍の階級章はいまいちわかりにくくて」

 ヤンも「はぁ、どうも。お久しぶりです」と遠慮がちに頭を掻きながら応える相手は、まだまだ若くて顔に張りのあるフランチェシク=ロムスキー医師。彼はエル=ファシルの脱出行に際しても民間協力者の一員であったし、その代表的な立場で随分と積極的にヤンに協力した、らしい。ヤンが言うことを信じないわけでもないが、本当に協力したのか原作を知る俺としてはイマイチ信用おけない。ただその実績は参加者の中でも高く、本人が性格上真面目なのか会議を一度も欠席せず、有象無
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