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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第79話 第四一回帰還事業団統括会議
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す?」
「出来なかったら職を賭すと言った以上、退役するさ。年金は貰えないし、もしかしたら借金を背負うことになるかもしれないが、マーロヴィアに行って鉱山労働者になるさ」
「全然罰になってませんよね、それ」

 年金の為に軍人になったと言って憚らないヤンには効果がないのかもしれないが、どうやら俺の覚悟は分かってくれたらしい。先程とは違った諦観のこもった溜息をついた後、紅茶を傾ける。俺もそれに応じるように珈琲に口を付けた。沈黙は数分。先に口を開いたのはヤンだった。

「先輩はいつも買う必要のない苦労まで買って出ますが、それは一体どうしてなんです?」
 士官学校の時と同様だ。その表情は柔らかいが、口調は鋭い。だから答えもあの時と同じだ。
「『平和』の為だ。そして俺は今、高速機動集団の次席参謀という職責にある」

 小会議室の、汚れ一つないぼんやりとした全天照明を、椅子を傾け、顎を上げて見つめる。

「ヤンがどう考えているか知らないが、俺は参謀という仕事はひたすら『考える』仕事だと思っている。自分が提案した作戦なり命令が、多くの将兵の生死を分け、その家族の心に重荷を負わせることになるとするならば、どれだけ考えを尽くしても考え過ぎということはない。俺自身天才でない以上、最適解を即答できる能力はない」

 目の前の天才はそうではない。原作でも散々語られているが、情報分析能力もさることながら、時として閃く知能の冴えは尋常ではない。前世でも現世でも知能は人並みの俺が最適解に達するには、事前に埋めていくべき穴を一つずつ潰していくことでしか成しえない。

 ヤンがごく潰しとか無駄飯ぐらいと言われるのは、軍に対する忠誠心の無さや戦争に対する忌避感ゆえの積極性の無さが、はっきりと態度に出てしまうところだ。それも個性だと俺は思うし、それを補って余りある用兵家としての才能がヤンにあることを、俺は『知っている』。そして俺は小心者で、自分にそんな才能がないことも十分承知している。ゆえに

「与えられた任務を確実に果たす為には、そのような些細なことにも全力を尽くす。見つかった穴は確実に塞いでおかなければ、おちおち道も歩けない。小心者ゆえの苦労性だよ」
「苦労は人に任せようとか、穴は避ければいいとか、私なんかは思うんですがねぇ」

 小さく肩を竦めると、ヤンは俺の要望を汲むと約束し、紅茶のお代わりをとりに行くのだった。





 エル=ファシルの英雄という爆弾の威力は、こちらの想定通りかそれ以上の働きをしてくれた。

 そもそも論としてはじめは軍も統合作戦本部から大佐クラスの人間を送り込んではいたが、避難施設の完工以降は出席していない。他者からの非難と過大な要求に嫌気がさし、もう口は出さないから金も出さんよと言わんばかりに連絡官として
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