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冥王来訪
第二部 1978年
狙われた天才科学者
百鬼夜行 その3
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おうぞ」
と渋々ながら応じた。

 大空寺は男の魂胆を読みかねていた。
態々ニューヨークより直行便で大阪まで来て即日で京都入りするに、何か重大なわけがあると考えた。
男の久方ぶりの訪日を喜んだが、その一方で危険視した。


 あくる日、男は単身、二条にある帝都城へ参内する途中の車列を、ボディーガードの運転する1969年式の赤いマスタングに乗りながら待った。
オートバイの警官隊に守られた御剣雷電の車列を見かけると、その後を追った。
勢いよくマスタングで、バイクの前に飛び出し、車列を(さえぎ)る。
男は助手席より飛び降りると、「待たれよ、御剣公!」と、駆け寄ってくる警官の制止を振り行って、御剣の車のドアを開け、乗り込む。

 男は、御剣の仰天した顔を見ながら、不敵の笑みを浮かべ、訊ねた。
「貴殿の方でも、その木原と言う男は困りかねているのかね」
急な男の行動に、御剣は、太い眉を顰め、 
「我等は今、木原の力に頼ってはいるも、信用はしておらん。
聞けば、豺狼(さいろう)のような立ち振る舞いをすると……」
と応じた。

「ならば、その男、我等に預けてくれぬかね……」
「あの男は疑り深い。早々に策に乗るとは思えぬが」
男は下卑た笑いを浮かべ、
「実は、ロスアラモスの学者共が木原に興味を示して、奴を招いたのよ」
「ほう、それで……」
「奴も、米国に乗り込むと周囲に漏らしたとか……なお、都合が良いかと」
御剣は、膝を打って、
「よい考えだ。褒美として、この度の無礼は、不問に帰す」
 と、いった。


 木原マサキの米国訪問の話は、即座に御座所(ござしょ)にまで伝わった。
正午の頃、政威大将軍は、二の丸御殿黒書院に御剣を呼んだ。
黒書院は嘗て江戸の頃、「小広間」と称され、上洛した徳川に近しい大名や高位の公家しか立ち入れぬ場所であった。

露払いの小姓に連れだてられた将軍は席に着くなり、上座にあたる一の間から訊ねた。
「木原渡米の話は、誠か。身共(みども)は今し方、茶坊主共より聞いたが信じられぬ」
二の間に平伏する御剣は顔を上げて、どこか不安げな表情をする将軍の顔を見つめる。
「殿下、(それがし)も、今朝米国の知人から伺ったばかりで御座います」
「この機会を通じて、我等も手に出来ていないゼオライマーの秘密が米国に漏れ伝わったら、どうする心算か」
「何、木原を、その前に殺せばよいのです」
不意に立ち上がると、食指で御剣の事を指差し、()()んで(なじ)った。
其方(そち)は、身共(みども)揶揄(からか)っているのか。その様な事は幼子でも判るわ……」
将軍は再び腰かけると、深い憂いを湛えた顔になり、
「聞く所によれば、東ドイツの将校と懇意にしているそうではないか。
もし木
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