第二部 1978年
影の政府
米国に游ぶ その1
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人にない、マライの、何とも艶っぽい姿態に、物腰柔らかな受け答え。
そんな所が、周囲の気を引いたのだろうか。
ハンニバル大尉と、彼女が付き合っているという、怪しげなうわさも流れた。
大尉も枯木ではない。ないどころか、40代の性も盛んなはずである。
自然、マライの立ち振る舞いや匂いには、ふと心を奪とられても、おかしくはない。
だが、事実無根だった事は、昨日の事の様に思い出せる。
恐らく、シュタージに目を付けられていたハンニバル大尉の妻を貶める為の、流言だったのだろう。
彼と、妻の関係は続いている様だし、アスクマンが泉下の客になってからは、噂はなくなった。
第一戦車軍団は、戦術機を扱うため、独自の通信隊を抱える関係上、婦人兵が他の部隊より多かった。
若い男女が同じ屋根の下にいる為か、何かしら道ならぬ恋や旺盛な愛欲に悩まされた。
年初のヴィークマンの婚前妊娠に始まり、少なからぬ者が人妻や若い通信兵と戯れたりと、醜聞に塗れた。
上層部から期待されていたベアトリクス・ブレーメが祝言を挙げるや、間もなく懐妊してしまった。
当事者で、彼女の良人であるユルゲンも、流石に笑うしかなかった。
そんな事もあって、軍団は、恋多き場所と嘲笑れているのも知っている。
軍全体からやっかまれているせいでもあろうが、事実だった。
『これで、俺がマライに心を捕らえられたりしたら……』
ユルゲンは一人で赤くなりながら、マライに向きそうな視線を、無理に窓に向けた。
マライは、ユルゲンからの恋情を感じた途端、凄艶な流し目となり、耳までほの紅く染めた。
年延えから見ても、この二人は、一対の美男美女であったばかりでなく、知らぬ人には夫婦にしか見えない。
ユルゲンのそばで、眺めていたヤウク少尉は、それを嫉たむという事すらも、知らなかった。
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