暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
米国に游ぶ その1
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たちと飛行機に乗った後、一人英国で降りて、サンドハースト士官学校留学ですし。
それに、カッツェさんは、私と一緒にコトブス県の北部(ノルド)飛行場に配備される予定です。
(今日のドイツ連邦ブランデンブルク州コトブス市)
基地司令は、ハンニバル大尉。ですから兄さんは安心して、ニューヨークで勉学に励んでください。
手紙は出来るだけ書きますので」
アイリスディーナの毅然(きぜん)とした声に、圧倒されつつも、
「わかった」
二人の声が途切れると、後ろに佇むマライが、
「でも、そろそろ出発のお時間が」
「今行く。少し待っていてくれ」
ユルゲンは、つい起つのが惜しまれてはそう言っていた。
するとまた、軍靴の足音がして、出発の時間が近い事を告げた。
「ユルゲン、そろそろ奥方様と別れは終わりにして。議長がお呼びだ」
「では、行こうか。ヤウク」
颯爽と、空港のロビーを後にして、貴賓室に向かった。

 貴賓室の中では、紫煙を燻らせた議長が、首相や外相と話し込んでいた。
聞き耳を立てていると、明後日開催される国連の一般演説に関しての事らしい。
ハイム少将が、ユルゲンの後ろに立っているマライに目を向けると、
「一応、大使館から護衛が着くことになっているが、ハイゼンベルク少尉を君の護衛につける」
「同志将軍、ありがとうございます」
そうは答えた物の、ユルゲンは、自身の胸のざわつきに驚いていた。
そんな疑問を頭に浮かべていると、ハイム将軍は深い溜息をついて、
「失礼だが、君は抜けている所があるな。
今度の留学は海の向こうのアメリカだ。ソ連の様においそれと助けることが出来ん。
だからハイゼンベルク少尉に護衛任務に就いてもらう。
彼女と一緒に暮らしてもらって、留学を無事終えてきて欲しいのだ」と小声で述べた。
「えっ、そんな」
「美人は嫌いか」
「いや、小官も美人は好きですが、今の話と何の関係が」
「同志議長が、君が、色仕掛けで狂わされないかと」
今の言葉が、何処か耳の遠くへ、消えてしまいそうな感じがする。
わずか1週間ほど前に、アイリスディーナの色香で木原マサキを惑わせた張本人の言葉である。
その内、遠くの議長や閣僚からの視線を感じた彼は、一度黙考してから、
「はい」と頷くしかなかった。

「これって、同棲じゃないか……」
過ぎていく機窓の景色をぼんやり眺めながら、ユルゲンが呟いた。
衝撃的な命令を受けてから、国防大臣からの訓示も、政治将校から生活指導もみんな吹き飛んでしまった。
議長の傍に呼ばれて話した内容もさっぱり覚えてはいない。
警護とはいえ、マライを四六時中側に置くなんて……どうしようもなく恥じ入っていた。
 何処か男勝りの幼な妻や、清楚な妹とは違って、どこか、しっとりと濡れた感じの典雅な女性だ。

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