第二部 1978年
ソ連の長い手
恩師 その3
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ゲルツィンは、薄ら笑いを浮かべる。
「その意気買った。サーベルだけでの一騎打ち。無論自前の戦術機でな」
先程まで平静さを保っていたカッツェは、その時ユルゲンが目を逸らした程、驚愕の色を表した。
「バカ、止めるんだ。そ、そんな事っ……」
ユルゲンは、おもむろに手を挙げ、カッツェの事を制する。
「もし議長の名代の私が勝ったら、貴方方はベルリン……否、ドイツ全土から引き揚げる覚悟を持ってもらいたい」
大佐は、紫煙を燻らせながら語り掛ける。
「ほう、面白い。ならば決着がつくまでベルリンには手を出さない確約はしよう。
明日の正午、場所はロストック軍港だ。楽しみに待っているぜ」
その言葉を聞いて、ユルゲンは不敵の笑みを湛える。
「良いでしょう」
青年将校の一団は、そう言い残すとその場を後にした。
ベルリン・共和国宮殿
早朝の宮殿内の一室。そこで男達が密議を凝らしていた。
白無地のシャツに薄い灰色のスラックス姿で立ち尽くす男。
男は、アベール・ブレーメの発言に血相を変える。
「何ぃ、ソ連首脳部が死んだって!」
ソファーに深々と腰かけるアベールが告げる。
「ゲルツィン大佐という怪しげな男の暴走……」
黒縁眼鏡を右手で押し上げる。
「党組織や細胞(共産党用語で下部組織の事)が健在だったらあんなことはあり得ない。そう考えると辻褄が合うではないか」
「じゃあ、仮にソ連最高指導部が死に絶えたというのなら、誰がソ連を操っているのだ」
ふと彼は、冷笑を漏らす。
「考えてみ給え」
右手をスラックスの側面ポケットに入れ、中より「CAMEL」のタバコを取り出す。
「『チェコ事件』の折にシュトラハヴィッツ君と轡を並べた、あの参謀総長か……」
縦長のオーストリー製のオイルライターで火を点ける。
「もしゼオライマーを利用してソ連指導部を消したのなら……」
アベールの発言に紫煙を燻らせながら、男は応じた。
「シュトラハヴィッツ君の話を聞く限り、党中央の意見には盲従するとの評判。
そうは思えぬが……」
「参謀総長の狙いは、端から共産党組織を乗っ取る事だったかもしれん。
予め作戦を練ってから、ゼオライマーを引き込んだ」
「いくら何でも滅茶苦茶な話だ」
すっと立ち上がり、背広の前ボタンを止める。
「或いは、首脳をゼオライマーに殺させてから、奴が赤軍に話を持ち込んだ。
ソ連を牛耳らないかと……。
軍は如何すると思う。ましてや指導部の死は、赤軍の責任問題に発展する。
決してあり得ない話ではない」
テーブルの上に置いてあるホンブルグのクラウンを掴み、持ち上げた。
右手で鍔を押さえて、左手で水平になる様に整えながら被る。
「確かに今回のゲルツィン大佐の行動
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