敢闘編
第四十九話 第五次イゼルローン要塞攻略戦(前)
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戦況です」
戦況概略図に戦闘開始後の状況が映し出される…艦隊戦力はこちらが不利ながら善戦といっていいだろう…そして現時間で状況は停止している。ヒルデスハイム伯は当艦隊が活躍出来ているのを改めて確認して嬉しそうだ。
「うむ、いい流れだな。このままいけば敵は要塞にとりつく事は出来んぞ。何か問題があるかね?」
そう、艦隊戦の状況がいいのでやはり皆気づいていないのだ。参謀長も不審そうな顔をしている。
「叛乱軍は何故最後尾の艦隊を戦線参加させなかったのでしょう?あの段階で此方の右翼方向から戦線参加すれば、駐留艦隊を要塞主砲の射程外から攻撃出来た筈です。緒戦から前衛の三個艦隊にだけ戦闘を任せて、一度も動いていない。不思議です。わざわざイゼルローンまで来ているのに練度や戦意不足とは考えられません」
俺の指摘は間違っているだろうか。敵の最後尾の艦隊は戦えるのに敢えて戦っていないような気がするのだ。
参謀長が腕を組んでいる。伯も俺の指摘に何かを感じ取ったのだろう、眉間に皺を寄せている。
「敵の最後尾の艦隊が戦線に参加するとなれば、我々は主砲の射程内に引っ込まざるを得ない。それを敵は嫌がったのではないか?そうなると奴等は完全に手詰まりになってしまうからな」
「しかし一度も動かないのは不自然です。戦線参加の動きを見せれば確かに我が軍は後退するでしょう、動くだけでもこちらに何らかの隙は生じます、それを狙ってこちらの艦隊戦力の漸減も可能でしょう。それなのに動きがないとすれば、何かを狙っているとしか考えられません」
伯がゴクリと唾を飲む音が聞こえた様な気がした。
「何を狙っているか、想像がつくかね、少佐」
「こちらの後退に合わせて急速追撃を狙っているのではないでしょうか。此方の後退速度以上で追撃し敵味方の混交状態を作り出す。そうすれば要塞も主砲を発射できません。味方がいますから」
伯もシューマッハ参謀長も驚いている。主砲を封じる手段としては単純だが効果的な手なのだ。だがタイミングが合わねば混交状態を作り出すのは難しい。敵がそれを行うには敵全軍の呼吸が合っていないと失敗の可能性が高い行動ではある。最後尾の艦隊がその機会を伺っているのだとすれば…。
「まさかそんな手があったとはな…参謀長、駐留艦隊後退後はワルトハイム達を呼び戻した方が良さそうだな。合流していつでも動けるようにせねば。駐留艦隊に少佐の懸念を伝えよう。あくまでも可能性の一つとして、だ」
「可能性の一つ…何故です?」
「長年前線を守っている彼等が、昨日今日前線に出てきた貴族艦隊の進言を素直に受け入れると思うかね?」
…確かにそうかもしれない、要塞の守備隊や駐留艦隊の彼等にしてみれば貴族の艦隊が増援というだけでも気に入らないだろう。ましてやその増援がないと戦線が維持できないとなれば、その腹の内
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