第六十五話 静かにはじまってその十一
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「それじゃあね」
「そうしてあげてね」
「そうするわ」
咲も約束した。
「モコについてはね」
「是非ね」
「そうするわね」
「それまでモコには長生きしてもらうからね」
「今三歳だけれど」
咲はモコの今の歳をここで思い出した。
「そこからなのね」
「後二十年は生きてもらうわ」
「二十三歳まで?」
「それ位はね」
そこまでというのだ。
「生きてもらうわ」
「犬で二十三歳って」
それはとだ、咲は考える顔になって応えた。
「かなりでしょ」
「それでもよ」
「そこまでなのね」
「生きてもらって」
そうしてというのだ。
「あんたの子供にね」
「会ってもらうのね」
「あんたも三十六になったらね」
「後二十年だとね」
「子供いるかも知れないでしょ」
「そうよね」
「だからよ」
「モコにはなのね」
「そこまでなのね」
「生きてもらって」
そしてというのだ。
「そのうえでね」
「私の子供と会って」
「仲良くしてもらうわ」
「私とは妹としてで」
「その子としては叔母さんとしてね」
その立場でというのだ。
「仲良くしてもらうわ」
「モコは頑張らないといけないのね」
「お父さんとお母さんが頑張ってよ」
「モコには頑張ってもらって」
「長生きしてもらうわ、一生程わからないものはないけれど」
何時どうなるかなぞわかりはしない、人間にしても犬にしても他の生きものにしてもそれは同じことである。
「けれどね」
「それでもなのね」
「出来る限りよ」
「長生きしてもらって」
「あんたの子供と仲良くしてもらうわ」
絶対にと言うのだった。
「モコにはね」
「そうして」
「一緒に幸せになってもらうわ」
「そうみたいよ、モコ」
咲は三本目を飲みつつモコに話した。
「だから頑張って長生きしてね」
「クゥン?」
寝ていたモコは咲に言われて目を覚まして彼女の方を見て鳴いた。丸くなったままそうした彼女を見てだった。
咲は自然と笑顔になってまた言った。
「ああ、寝てて」
「クゥン」
「モコが長生きするには私達も頑張らないとね」
「そうよ、健康に暮らしてもらう様にね」
「していくことね」
「奇麗な場所に住んでもらって」
そうしてというのだ。
「そのうえでね」
「よく寝てもらう」
「よく食べてもらってね」
「それで長生きしてもらうのね」
「何かあったらお医者さんに診てもらってね」
獣医であることは言うまでもない。
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