銀華編 ウルトラクルセイダーファイト 前編
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
悪感を煽る、禍々しい色の粘液が視界の全てを覆い尽くしている。周囲の景色はその粘液によって歪められ、逃れられない「死」の瞬間が近付きつつあることを示していた。
そんな絶望感な世界――シルバーブルーメの体内に囚われていた駒門琴乃は、憔悴し切った様子でその光景を眺めている。
パトロール中に突然襲撃を受け、乗機のBURKセイバーもろとも体内に取り込まれてから、すでに10時間以上が経過しようとしていた。
「……どうやら、私の悪運もここまでのようだな」
彼女を乗せたBURKセイバーの装甲はシルバーブルーメの体液によって徐々に溶解し始めており、原型の維持すら困難なほどにひしゃげていた。
何も出来ず、ただゆっくりと迫り来る死を受け入れるしかない。そのような状況に長時間置かれれば、厳しい訓練を受けたBURK隊員の精神力でも耐え切れないのだろう。
「だが……私とて、人類の矛たるBURKの隊員だ。このままタダで死んでなるものかッ……!」
一種の自暴自棄なのか。虚な目で自爆スイッチに視線を移した彼女は、救助を待たずしてシルバーブルーメを内側から吹き飛ばそうとする。
だが、彼女の震える指先はどうしても、その先にあるスイッチを押し切れずにいた。やがて自嘲の笑みを浮かべ始めた彼女は、力無く手を下ろしてしまう。
「……ふ、ふふっ。何がBURKの隊員だ、笑わせる。ただの学生だった嵐真をウルトラマンとして戦わせておいて、自分は死を恐れるとはなっ……!」
ウルトラアキレスとして地球を救う宿命を帯びてしまった青年、暁嵐真。ただの学生だったはずの彼を戦いに駆り出していながら、BURKの隊員である自分が死を恐れている。
その現実に直面した彼女は己の弱さを嘆き、悔しさに拳を震わせていた。
「……!?」
そんな時。聞き覚えのある轟音が遥か遠くから響き渡り、彼女はハッと顔を上げる。それはまさしく、BURK製戦闘機のエンジン音だったのだ。
「こ、この音は……まさか!?」
その「音源」が凄まじい速さで近付いてくる。しかもそれは、1機や2機ではなかったのだ。
琴乃がその異変に気付いた時にはすでに――地上の基地から飛び立ったBURKの戦闘機部隊が、宇宙を漂うシルバーブルーメの姿を捕捉していたのである。
しかも。純白に塗装された流線型のボディを持つ、その機体は――ただの宇宙戦闘機ではなかったのだ。
BURKセイバーの後継機として開発が進められている、次期主力戦闘機――「BURKクルセイダー」。
その先行試作型として僅か5機だけ生産された、複座式宇宙戦闘機「BURKプロトクルセイダー」だったのである。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ