銀華編 ウルトラクルセイダーファイト 前編
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市街地に甚大な被害が出る。……MACの全滅後に起きた惨劇は、君も知っていよう」
超獣を撃破した実績もあるシルバーシャーク砲ならば、確かにシルバーブルーメも容易く倒せるだろう。だが、琴乃が搭乗しているBURKセイバーは確実に助からない。
故に弘原海は隊長として、人間として、断固として反対しているのだ。綾川司令官はそんな彼の想いと怒りを承知の上で、彼の怒号を一心に浴びている。
遥か昔、シルバーブルーメの急襲によりMACが全滅した直後。当時の市街地に設けられていたデパートが、その円盤生物の襲来を受け、為す術もなく蹂躙されるという事件が起きていた。今回の決定を下した総理大臣の身には、その惨劇で家族を喪った遺族の血が流れているのだ。
シルバーブルーメが地上で起こした、凄惨たる怪獣災害。その地獄を味わった遺族を先祖に持つ彼が、今回の決定に踏み切るのは必然だったのだろう。その過去を知るが故に、綾川司令官は総理の判断を恨むことすら出来なかったのである。
「……私を殴って君の溜飲が下がるのなら、そうすれば良い。私を殺せば駒門隊員の命が救われるというのなら、この老耄の首など喜んで差し出そう」
「司令……!」
「それでも私は牙無き人々を守るBURKの司令官として、然るべき決断を下さねばならんのだ。ここで業を背負えぬようでは、それこそ梨々子に合わせる顔がない」
より多くの市民を救うため、自分を慕っていた部下を殺す。その深き業を背負い、シルバーブルーメを討つという覚悟を決めた綾川司令官は、一歩も退くことなく毅然とした佇まいで弘原海と向き合っていた。
大切な愛娘を想う1人の父親として。より多くの人命を預かるBURKの司令官として。葛藤という道のりをすでに乗り越えた、1人の大人として。彼は、全ての重責を背負う決意を固めていたのである。作戦司令室のデスクに置かれた灰皿には、彼の苦悩を物語るかのような、吸い殻の山が築かれていた。
そんな彼の悲壮な信念を目の当たりにした弘原海は、怒りとも悲しみともつかない表情で唇を噛み締める。この会話を琴乃が耳にしていれば、自分に構わず撃ってくれと懇願していたのだろう。そこまで想像がつくからこそ、苦しまずにはいられないのだ。
そして言葉を失った弘原海に対し、話は終わりだと言わんばかりに綾川司令官が踵を返した――次の瞬間。この一室を満たす暗澹とした空気を浄化するかのような、甘い匂いが吹き込んで来る。
「そんな業を独りで背負おうなんて、思い上がりが過ぎるんじゃないですかぁ? あの喧しい乳牛女が居なくなったら、それはそれで張り合いがなくてつまらないんですけどぉ?」
「……! お、お前達は……!」
作戦司令室のドアをノックも無しにいきなり開き、ずかずかと押し入って来る無礼な集
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