第六章
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「人生を壊されたんだ」
「しかも周りの人達も巻き込んで」
「今度は彼等が怨んで憎むよ」
「そうなりますね」
「マイナスの連鎖だよ」
「それじゃあ穴二つどころか」
彼は長内の話を聞いて言った。
「もう」
「それどころじゃないね」
「そうですよね」
「それが呪いだよ、幾ら努力して身を立てても」
「そのはじまりが呪いで」
「呪いに心を囚われているとね」
「ああなりますか」
長内に対して問うた。
「そうですか」
「そうだよ、それは決して幸せなことではないよ」
長内は遠い悲しい目をして語った、そしてそれからもだった。
野上は自分をいじめていた相手への復讐を続けていった、それを見た誰もが内心彼を疎む様になった。彼は若くして教授にもなり名を知られていったが。
誰も彼を避けた、その行いを見て。彼は孤独な一生を送った。だがそれでもだった。
「私は私の為したいことをしているだけでだ」
「それで、ですか」
「いい、誰に嫌われようともだ」
その復讐のことを言うのだった。
「それでもな」
「構わないですか」
「全くな」
こう言って復讐に生きていった、孤独なまま。
そしてその彼を見てだ、既に大学を退いている長内は話した。
「あれで彼は満足なのだな」
「そうみたいですね」
野上と同じく教授になっている彼も応えた。
「どうやら」
「どう見ても幸せではないが」
「立場と収入があっても」
「復讐ばかり考えて疎まれてな」
「怨みや憎しみを買って」
「そうなっているが」
それでもというのだ。
「それでもいいのだな、幸せでなくともな」
「本人がそれでいいのならですね」
「いいのかもな」
「そうですか」
「だがああはな」
「なりたくないですね」
「孤独なまま亡くなる様では」
それではというのだ。
「もうな」
「こんな寂しいことはないですね」
「だからな」
それでというのだ。
「彼の様にはだ」
「なるべきではないですね」
「絶対にな」
こう言うのだった、孤独なままの彼を見て。やがて野上は死んだが脳溢血で道で倒れて急死であった、その葬式は仕事の関係で集まった者達以外は誰もおらず実に寂しいものだった。家の墓に入ったが誰も彼に手を合わせなかったという。そして死んでよかったと彼を知る誰もが言った。
人を呪わば 完
2022・5・18
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