第四章
[8]前話
「そうしてだ」
「使うのですね」
「そうすべきなのですね」
「そうだ、そして私は今の様になった」
ローマで比類なきまでの者になったというのだ。
「まさにな」
「ううむ、しかしです」
「途方もない額でしたし」
「正直カエサル様程借りられた方は知りません」
「そこまででした」
「そこまで借りられてとは」
「だが私はことを為せた、ならどうということはない」
カエサルは余裕のままだった、そうしてだった。
彼は借金持ちから一転して資産にも恵まれる様になった、それで家の者は彼にあらためて言ったのだった。
「あれだけの借金がなくなるとは」
「思わなかったか」
「そしてです」
そのえでと言うのだった。
「資産まで得られるとは」
「そうか、しかし言ったな」
「お命がある限りですね」
「借金は返せるのだ」
そうだというのだ。
「そして大事を為す為にはな」
「借金もですか」
「時として必要だ、そして私は今に至る」
「借金をしたお金を使われて」
「そのうえでな、そう考えると借りられてよかったな」
「それはそうですが他の誰にもです」
「勧められないか」
「全く」
主に憮然とした顔で答えた。
「旦那様でもない限り」
「そうか、では私は借金のことでも歴史に名前が残るか」
「その為されたことで、ですか」
「そうだ、ただ髪の毛のことでは残りたくないな」
「そちらでも残るのでは」
「そのことは残らないで欲しいものだ」
だがこちらのことも歴史に残っている。
ユリウス=カエサルは非常に逸話が多い人物でありその中でも借金のことは有名だ。彼は借金を恐れず借り続け莫大と言うのもおこがましいまでの額のそれを持っていた、しかし彼はそのことに常に平然としており金を貸した者にも借金取りにも堂々としていて何時しか彼等も彼に何かあっては借金が返ってこないのでカエサルが絶対的優位な立場になった。しかもその借金は後に彼に莫大な資産が出来て返している。途方もない借金で身を立てた彼は借金を恐れず遂にはそれを全て返しても残るまでの資産を得てしかもことを成した。彼だからこそ出来たことであろうか。
借金王 完
2022・3・16
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