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自覚がなくとも
第三章
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「ここの高等裁判所はまだまともだしな」
「ええ、世の中何があっても死刑反対とか言う人もいますが」
「あんな奴死刑にしないでどうする」
「絶対に反省しないで出所したらまた悪事をするに決まってますからね」
「だから棄却される、そしてな」
「死刑がですね」
「執行される、あいつはもう終わりだ」
 鳥越を冷たい目で見て話した、そしてだった。
 二人で裁判の場を後にした、鳥越は暴れだしたが取り押さえられそのうえで連行されていった。その後で。
 彼は奥田の予想通り上告したが棄却されてだった。
 この裁判から数年後奥田は彼の死刑が執行されたと聞いた、そのうえで本多に対して険しい顔で話した。
「あいつの死刑だがな」
「聞いてますよ」
 本多は嫌そうに応えた。
「自分の部屋に人が来てでしたね」
「失禁して死にたくなって叫んでな」
「暴れ散らして何で俺が死刑になるんだって言って」
「少年法がどうとか言ってな」
「絞首台に上げられても俺はあの時未成年だったとか言って」
「何があっても助かろうとしたそうだな」
「そうみたいですね」
 こう奥田に話した。
「どうやら」
「そして首に縄をかけられてな」
「その時は周りを殺すとかふざけるなとか怒鳴り散らして」
「縛り首になったな」
「そうらしいですね」
「死刑になる自覚はなくてもな」 
 奥田は本多の話をここまで聞いて忌々し気に応えた。
「あれだけの悪事をしたらだ」
「死刑になりますね」
「しないと駄目だ」
「そうですよね」
「殺された人達、傷付けられた人達はどうなる」
「その人達の人権は」
「変な新聞社や知識人とかがあいつの死刑にどうとか言ってるが」
 まだ未成年だっただの死刑自体間違っているだのだ。
「そんなことはだ」
「殺された人のこと、傷付けられた人のことを思えですね」
「そうだ、オウムのテロで権力に反対するからいいと言った馬鹿がいたが」
 大阪にいたというこの愚か者の話もした。
「そんな奴どう思う」
「馬鹿ですね、法律も被害者の人権も暴力の非道さも人の命の価値もわかっていない」
「そんな馬鹿と同じだ」
「あいつの死刑にどうとか言っている連中は」
「あんな奴が更正するか、そして何人殺して傷付けた」
「そう思うとですね」
「死刑が当然だ、むしろ縛り首どころかな」
 そうした生ぬるい、そうした言葉であった。
「鋸引きでもしておけばよかったんだ」
「あそこまでの奴は」
「そうだ、死刑廃止とか言う前に被害者や遺族の人達のことを考えてだ」
 そうしてというのだ。
「罪も重さも更正の可能性もだ」
「考えるべきですね」
「それで死刑のことを言え」
 奥田は最後は吐き捨てる様に言った、そのうえで鳥越の犠牲となった一家で一人だけ残った娘家
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