第三章
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「白に戻っている」
「そうですね、桑の実もその様に変わっていきますね」
「実の色がか」
「そうです、最初は白いですが」
それがというのだ。
「赤くなりそこから黒くなりますね」
「確かにな」
「はい、ですから」
「ハーデス神からの問いはか」
「そういうことです、似ているのは大きさや形ではなく」
そうしたものではなくというのだ。
「色なのです」
「それか」
「そうです、似ているといいましても」
「大きさや形だけではないか」
「身体の一部の場合もあり」
「色もだな」
「そうです、そしてこの度はです」
ポリュエイドスはさらに話した。
「色がです」
「似ているのだな」
「そして色の変わり方がです」
「桑の実と同じだからか」
「私にはわかりました」
「成程な、ではな」
それではとだ、ミノスは頷いた。そうしてハーデスの神殿に自ら赴いて尋ねるとハーデス自身が表れて言ってきた、黒い髪と髭の厳めしい暗い顔の男である。
その彼がだ、ミノスに話した。
「その通りだ」
「そうですか」
「そうだ、ポリュエイドスの言う通りだ」
微笑んでの返事だった、暗い顔がそうなっている。
「まさに今のそなたの息子はだ」
「桑の実ですか」
「それに似ている」
その通りだというのだ。
「私もその様にしたのだ」
「そうでしたか」
「ではそなたの息子を元の姿に戻そう、しかしだ」
ハーデスはさらに言った。
「もう二度と悪いことをしない様にな」
「息子に言い聞かせておきます」
「本人もこの度のことで反省したと思うがな」
こう言ってだった。
ハーデスはグラウコスを元の姿に戻した、王宮に戻ったミノスはその我が子を見て大いに喜び抱き締めた。
その後でポリュエイドスに山の様な金を贈って言った。
「この度は助かった、そして学ばせてもらった」
「何に似ているかですか」
「大きさや形だけではないな」
「はい、身体の一部にです」
「色もだな」
「似ている場合があります」
「そうだな、一部だけを見ずにな」
それでというのだ。
「全体を見ることだな」
「そうです、それで私は色を聞いてです」
変わるそれはというのだ。
「わかりました」
「桑の実に似ているとだな」
「そうです」
「このこと覚えておく、あらゆる部分を見て考える」
ミノスは強い声で述べた。
「ではな」
「そうしてですね」
「王としてこのクレタを治めていく」
ミノスはポリュエイドスに褒美をやってから述べた、そうしてだった。
これまで以上にクレタをよくしていった、そして元の姿に戻ったグラウコスも反省して以後は真面目で聡明な少年になった。ギリシアの古い話である。
子牛が似ているもの 完
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