第二部 1978年
狙われた天才科学者
一笑千金 その3
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、車より降りると、懐中よりミノルタ製の双眼鏡を取り出す。
ダハプリズム式のレンズで周囲を見回し、ふと思慮に耽った。
はるか遠くに見えるコンクリート製の所々崩れかけた壁は西ドイツの飛び地を覆う物だろう。
ベルリン市内でも無数の飛び地があって米ソ英仏の四か国軍が定期的に巡回している。
その様な場所で度々暗殺未遂や誘拐事件が起きても不思議ではない。
KGBもKGBだが、止めなかったCIAもCIAだと、紫煙を燻らせながら、周囲を観察していた。
やがてユルゲンの招きで立派な屋敷に案内された。
建屋は戦前に立てた物であろうか。壁は所々色が褪めて、補修も満足されてない様子。
中に入るなり、ユルゲンは
「俺の家だ。ここなら万が一ソ連も手を出せまい」と呟いた。
マサキはその様を見て、この男の無謀を逞しく思い、また苦しく思った。
持ち寄った茶や菓子を前にして雑談をしていると、
「アイリス、お客人だ。挨拶しなさい」と奥に声を掛けた。
ドアが静かに開くと、マサキは目を見張った。
そこには白皙の美貌を湛え、腰まで届く長い金色の髪を編み下げで綺麗に結った、楚々たる麗人が居た。
金糸の様な眉の麗しさ、透き通るばかりの肌の白さ、また、愁いを含んだサファイヤ色の眼、この世の物とも言えぬものばかりで、まるで19世紀の絵画から出て来た様な麗しい女神や妖精を思わせた。
また彼女の身に着けている象牙色のカーディガンセーターと白地のブラウスからは、砲弾型の乳房や腰の括れも浮き立たせ、非常に艶かしく見える。
濃紺のフレアスカートの下から浮かび上がる、黒いストッキングにパンプスを履いた足はなんとも言えない細さ。
咄嗟に、マサキにも、何とも言えない眩い心地がした。
(『ああ、この様な珠玉の様な乙女が居ようとは』)
今まで感じた事のない様な動悸と共に、全身の血が熱くなっていくのを感じた。
マサキは、今まで見た事のない美女の新鮮な姿にすっかり見入ってしまっていた。
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