第三十三話 夏が近付いてその十一
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「努力することがね」
「いいのね」
「アルバイトもよ」
これもというのだ。
「頑張ってね、お金の使い方も覚えて」
「ちゃんと使うことも知るのね」
「本当に今お話している人みたいになったら」
それこそとだ、母は顔を曇らせて話した。
「最低だからね」
「私自身が」
「破滅するしかないわ」
その人生はというのだ。
「世の中どんな哲学や宗教でも救われない人もいるけれど」
「その人がそうだったのね」
「あまりにも酷い人はね」
その心がというのだ。
「どうにもならないのよ」
「救われないのね」
「ええ、その人のお話聞いてわかったわ」
「そのことがなの」
「確かにね」
こう留奈に話した。
「本当にね」
「どんなことをしても救われない人ね」
「普通の人は救われても」
そうなってもというのだ。
「今お話した人みたいにどうしようもない人ってね」
「いるのね」
「残念なことにね、それでよ」
「そんな人は何をしても救われないのね」
「?陀多と同じかしらね」
「芥川龍之介の蜘蛛の糸?」
「あの作品でお釈迦様は?陀多を助けようとしたでしょ」
芥川の代表作の一つである、童話であるがそう思って読む人は少ないかも知れない作品であろうか。
「地獄から蜘蛛の糸を垂らしてね」
「?陀多が一つだけいいことをしたから」
「蜘蛛を助けたからね」
「それで蜘蛛の糸を垂らしたのね」
「それで助けようとしてもだったわね」
「他の地獄に落ちた人達が登ってきたら自分だけが助かると言って」
自分の下についてくる者達に怒鳴ったのだ、蜘蛛の糸が重さで切れると思って。
「それでお釈迦様は糸を切ったでしょ」
「そうだったわね」
「?陀多もね」
「どうしようもない人だったから」
「そうなったのよ」
「救われなかったのね」
「その人も同じよ」
今話している輩もというのだ。
「結果としてね」
「誰がどうしても救えなかったから」
「蜘蛛の糸に文句言ったらね」
それこそというのだ。
「救われる筈がないわ」
「そういうことね」
「お釈迦様でも匙を投げる人もいるから」
?陀多の様にというのだ。
「どんな哲学でも宗教でもよ」
「救われない人がいるのね」
「現実としてね」
「残念なことね」
「残念でもね」
「いることはいるのね」
「そうよ、そうなったら自分が不幸になるから」
今話した様にというのだ。
「結果としてね」
「碌でもない人生で結末になって」
「そうなるからね」
だからだというのだ。
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