TALES OF ULTRAMAN 鬼神の立つ湖
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かべている。
穢れを知れない乙女にも艶やかな女性とも見える巫女は、鼻筋の通った非常に美しい顔立ちをしていた。かつて彼女に惚れた男が敵わぬ恋ゆえに心を病み、身を滅ぼしたなどという話があった。村の女たちがこぞって面白そうに話しているのを聞いたことがあるものの、本当のことかはわからない。
「お前たちは夢を見ていたのではないと、はっきりと言えるか」
まっすぐに大悟の目を見据えた巫女に問われて、大悟は力強くうなずいた。
「あれは夢ではありません。あの怪物が大地を揺るがし、歩き回るのをこの目で、耳で、そして足で地響きをしっかりと感じました」
巫女はそれを訊くと、堀兵衛や美座伶の方へも問いただすような鋭い目線を送った。堀兵衛はうつむきがちでありながら力強くうなずいたし、美座伶は何も反応を示さなかったものの、巫女は何か思いを巡らせているような顔つきで美座伶から目を離し、再び大悟へと目を戻した。
「お前たちが見たのは、護琉座さまであろう」
ごるざさま?と大悟が訊くと、巫女は続けて語った。
「左様。我らの思いもよらぬほど太古の昔にこの大地を支配した邪神様に仕えていたお方じゃ」
邪神様?と大悟が口に出すと、巫女はうなずいた。
「大地を揺るがし、火を食らい、人や怪物も蹂躙するおそろしい神じゃ」
それから、巫女は大悟の目をまっすぐと見据えてこう問いかけた。
「他に、何かおかしなものを見つけたりはしなかったか?」
そう言われて大悟は真っ先に懐の神器を思い出した。はじめは大悟も神器のことを話そうとした。が、すぐに自分でも理由はわからないまま神器のことを口にするべきでないと直感し、開きかけた口を閉じた。すると巫女が大悟に近付いてきて二人はまっすぐに顔を見合わせる形になった。その時に大悟は巫女の顔に目を奪われながらもその反面、一刻も早くその視線から逃れようとする自分に気が付いた。
巫女の目は一目見ると甘い香りに似たような煌びやかな光を放っていた。これが他の男たちの言う艶やかさなのだろう。けれども大悟が見たものはそれだけではなかった。巫女が放つ艶やかさのその奥に、大きな虚空を見た気がした。彼女の表の顔とその奥に隠されたものを遠く隔てるための虚空。さらにその奥には蛇の牙にも似た激情の激しさがあった。その激情を垣間見た時には大悟は思わず後ずさりしかけた。しかし巫女は大悟を絡めとろうとするようにさらに近づいてくる。
その時、腰元で、美座伶が大悟の衣の裾を握る力を強めるのを感じて我に返った。美座伶もまた、加魅羅の巫女にただならぬ気配を感じているのかもしれない。だとすれば、自分の勘に従ってやはり神器のことは話すまい、と大悟は瞬時に判断した。
「いいえ、特には何も。その怪物に見つかるのではないか、と気が気でなかったものですから」
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