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TALES OF ULTRAMAN  鬼神の立つ湖
TALES OF ULTRAMAN  鬼神の立つ湖
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はや道に迷いようがないように見えた。
 道の途中、大悟は堀兵衛に問い掛けた。
「堀兵衛、あれは一体何だったんだろう」
 堀兵衛は青白い顔をしたまま首を振り、何も答えなかった。美座伶もまた何も言わずに森をきょろきょろと見回しながら歩いている。あまりにうろうろとしてまたどこかに迷いこまれるといけないと思い、大悟は常に美座伶の手を握っていた。
 懐にしまった神器が肌に触れて冷たかった。神器は今では特に異変もない。岩の怪物が近くを通り過ぎた時、神器が震え出したのは怪物を呼んだのだろうか?それとも、怪物が近付いたことで神器が目を覚ましたのだろうか?道中で大悟は口数のない二人に挟まれながらそんなことを考えていた。

 村では大人たちが皆ほうぼうで表に出て走り周りながら互いに声をかけあっている。大悟たちが夜中に森に迷いこんだことが知れて、皆で探し回っているのだろう。すると実際に村人の一人が大悟たちの姿を目にとめてあらんかぎりの声で叫んだ。
「おおうい、いたぞお」
 途端に皆がこちらへ駆け寄ってきたので、ばつが悪くなった大悟は思わず苦笑いを浮かべた。集まった人々は口々にどこ行っていた、心配したぞ、と声をかけてきたが、間もなくして人々をかき分けて宗像(むなかた)の家の長男坊、正一郎(せいいちろう)の若旦那がやってきた。宗像の家は地頭だった。その嫡男である正一郎は武家の子でありながら百姓にも分け隔てなく接する男で、村人たちにも慕われていた。年は大悟たちより一回り上だったので、子供の頃はよく大悟たちの面倒を見てくれたものだった。百姓たちに混じって村の仕事を指揮することが多く、麻黒い肌の屈強な体つきから力仕事でも頼りにされる男だった。
「三人とも心配したぞ。どこいってたんだ」
 正一郎は三人を無闇に咎めず、落ち着いた様子で声をかけてきたので大悟は安心したながら答えた。
「美座伶が森に迷い込んで。それで探していたんです。堀兵衛も一緒に探してくれて」
「厠で用を足していたら窓から大悟が走ってくるのが見えたんですわ。それでどこいくんか訊いたら美座伶の嬢ちゃんがいなくなったいうから」
 どうして村のものたちに声をかけないんだ、と正一郎が訊くと大悟がばつが悪そうに答えた。
「村の皆を起こすのが申しわけなくて。森だってのはわかっていたから」
 申しわけありません、と大悟が頭を下げると、正一郎は呆れ半分、それでいてほっと一安心したような溜息をついて大悟の肩に手を置いた。
「まあいい。何事もなくてよかった。まったく、夜中の森に分け入って怪我一つなく帰ってくるなんて運のいい奴らだ」
 そう言って正一郎が笑っているところに、また人だかりが割れて誰かが近付いてくるのが見えた。堀兵衛の母親、なかだった。なかは牛のような勢いで進み出るなり、堀兵衛の頭を小突いた。
「お前さ
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