TALES OF ULTRAMAN 鬼神の立つ湖
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大悟たちは思わず身構えた。けれども彼らは大悟たちの顔を見るなり、その無事を喜び、そして自分達の過ちへの後悔を口にした。加魅羅の呪術によって正気を失っていたとはいえ、一度は大悟たちに弓を向けたのだ。男たちは非礼をひざまずいて大悟たちに詫びた。それから、長老たちがやってきて改めて祭を取り行おうと口にすると村の者たちは賛同した。改めて大悟や鬼神様を讃えるのだ。しかし、それには大悟は苦い表情を浮かべた。
「ええやないか、またうまいもんが仰山食えるで」
そう言いながら堀兵衛は大悟の肩を叩いたのだが、大悟はそれでも浮かない顔をしていた。
「祭りの間、皆が寄ってきて厠へいくのにも大騒ぎするんだもの。窮屈なのは苦手だよ」
その後のことを話しておこう。沢の爺は鬼神たちの闊歩する様をこの目に見ながら後世にその様を書き記さずには死ぬに死ねぬと息巻いて大がかりな書物の執筆に取り掛かった。これには堀兵衛による記述や正一郎による加筆も多く含まれており、村で大切に保管されていた。しかしそののち、村が百姓同士の戦に巻き込まれた際に行方知れずとなってしまった。ここに記されているのはあとから見つかった写しの一部一部と、村の老人たちが口々に伝えた伝承とをつなぎ合わせて編纂したものである。
利明は今度のことでさらに武士としてさらに多くを学びたいと思い立ち、それから数年すると村を出て全国を旅して回るようになった。行く先々で彼は今回のような奇怪な事件で困っている人々を助け、やがては新城の名を捨てて旅の道中で世話になった錦田家の名をもらい、錦田小十郎影達と名乗るようになった。
美座伶はそれからしばらくして、湖岸の村の巫女のもとについて巫女の修行を始めることとなった。祭の時に巫女が美座伶を見出し、是非とも自分のもとで修行をつけたいと大悟に申し出たのだった。美座伶の人やモノのサダメを見通す力に早くから勘づいていた様子だった。大悟は美座伶が望むなら、と返事をし、美座伶は以外にも二つ返事で巫女のもとについた。それから立派に修行を治めた美座伶は大悟たちの村へと戻り、加美羅の巫女が空けた巫女の席を埋め、人々にとって心強い巫女であり続けたという。しかし、このことで堀兵衛は一生涯独身を貫くことになるのだが、それはそれで彼の本望だったのかもしれない。
さて、大悟に関する詳細な記述はどの書物にも残されていない。光命と共に旅に出たという記述もあるのだが、一方で一生涯を村で静かに暮らしたという記述もある。ひょっとすると、沢の爺や堀兵衛たちが書物のなかで大悟のその後に関する記述を残すことによって彼の子孫にいらぬ苦労がかかることを避けたのかもしれない。一説によれば、その後彼は来たる戦乱の世をくぐりぬけたあとに新天地を見出し、身寄りのない子供たちや傷ついた農民たちとともに村を開拓し、そこで新たに円加(
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