TALES OF ULTRAMAN 鬼神の立つ湖
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顔をして何も言わず、ただ呆然と火の側で人々が踊り、歌うのを眺めている。歌の中で村人たちは何度も彼らを鬼神様の宿り子として崇めた。しかしもはや大悟も光命も、鬼神の宿る器ではないのだ。
両の鬼神が再び人の姿に戻った時、大悟の持っていた神器は跡形もなく姿を消していた。そのあとで辺りを堀兵衛たちと一緒に探しても見つからなかったので、大悟は鬼神様自身が大悟のもとを離れて再び眠りについたのだと静かに悟った。
光命も同じだった。元の姿に戻った時、光命の姿が見当たらないのでどこに行ったものかと辺りを見回していた。しばらくして村人の一人が湖岸の水際で光命を見つけたという声が聞こえてきた。元の姿に戻った時、光命は気を失って倒れていたという。彼はそのまま湖の向こう岸にある村に運ばれ、手当を受けた。二日ほどして意識を取り戻した時には、大悟たちのことを見るなり拍子抜けしたような顔で「どなたです?」と訊いてくるので驚いた。どうやら、大悟たちのことを一切覚えていないらしい。それどころか、どうして自分がその場にいるのかもまったくわからない様子だった。おそらく彼に宿っていた鬼神もまた彼を離れ、また別の場所へと向かっていたのだろう。その夜、湖岸の村の子供たちは矢のように飛んでいく流れ星を目にしたという。鬼神が光命の口を借りて語ったことが本当だとするならば、その流れ星は彼自身だったのかもしれない。
これまでのいきさつを踏まえてもなおこれほど居心地が悪いのだから、大悟の隣で訳もわからないまま歓待を受けている光命も大変なものだろう。大悟はその様子を見て苦笑いしながらも内心、寂しいとも心細いともいえる気持ちになっていた。鬼神が宿っていた頃の光命にもっと聞きたいことがあったのに、今ではもはや聞けなくなってしまったのだ。
「そういえば、村の皆は大丈夫だろうか」
元いた村へ帰る道中で、大悟がふと口にした。
「加魅羅の術にかけられた人々が元に戻っているといいけれど」
すると、堀兵衛が大丈夫やろ、と返した。
「加魅羅はもういなくなったんや。村の皆ももうそろそろ目を覚ましてるころやろ」
でなければ、と言って堀兵衛は横を歩いている光命に目をやった。
「この坊さんにお経でもあげてもらえば悪いもんもどっか飛んでくやろ」
堀兵衛の言葉を聞きつけると光命は生真面目な口調で返した。
「堀兵衛殿、お経はまじないではありませんよ」
村に帰る道でも、光命は結局大悟達と旅を共にしていた。他に行くところがない様子だった。それまで大悟たちと共に旅路を分かち合い、戦った光命とはまったくの別人ではあるものの、今一緒にいる光命も、彼は彼でおそらく楽しく付き合っていけるだろう。大悟はそんな気がしていた。
村に着くと、一同の帰還に気が付いた村の者たちが一気に大悟たちのもとへ駆け寄ってきたので
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