TALES OF ULTRAMAN 鬼神の立つ湖
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せられていた彼女の美貌は彼女が作り出したまやかしに違いないこと、そして彼女は見た目よりも遥かに年老いていて、なおかつその正体を察するにおよそ見るに堪えない禍々しいものに違いないということ。そのことを堀兵衛は察したのだった。同時に、短剣を手にした加魅羅の巫女の目が堀兵衛をとらえにじり寄ってきた時には、彼女の美貌だけを真実として見とれていたことを心から恥じ、後悔した。
とうとうあと堀兵衛まで数歩というところで匿っていたはずの美座伶が加魅羅の巫女の前に出てきて立ちはだかった。
「あかん美座伶、逃げるんや」
堀兵衛は美座伶に言おうとしたものの、口がうまく動かない。とうとう加魅羅の巫女が獲物を狩る蛇の如く目を見開いて美座伶に飛びかかった時、堀兵衛は思わず目を閉じかけた。けれども、実際には加魅羅の巫女は美座伶に指一本触れることも敵わず、彼女は見えない手に払われるようにはじきとばされてしまった。同時に、堀兵衛たちを封じ込めていた金縛りも解けた。
「一体、どういうことや」
思わず呟く堀兵衛をよそに、美座伶は少しばかり怒って見せるような表情で加魅羅の巫女を見据えていた。
「見るな」
加魅羅の巫女は息も絶え絶えに声をもらしながら、美座伶の視線を恐れるように後ずさりした。
「私を見るな」
加魅羅の巫女が反撃をしてくるかと身構えたところで、どこからか石が飛んできて加魅羅の巫女の横顔をかすった。石の飛んできた方向を見れば、先ほど逃げていった村人たちが大挙して加美羅の巫女に向かってくる。皆大悟たちの戦う姿を見て思い直した様子だった。巫女は呪詛を口にしようとして、飛んでくる石を体にいくらかまともに食らった。雨のように降ってくる石の前では、まともにまじないをかけることもできない。村人たちもそれを見て取ったのか、次々に雨あられと石を投げ続けた。
それから彼女は、踵を返して林のなか、暗がりの道をどこへともなく駆けて逃げていった。それよりあとに彼女の姿を見たものをいないという。
そうこうしているうちに鬼神たちと怪物同士の戦いも戦況が変わっていった。自在に飛び回りながらまるで自身が矢であるかの如く向かってくる滅琉羽の攻撃に対して、大悟も最初は押されていた。しかし、そのうちに沼で大蛇と戦った時と同じように額の水晶に力が集まるのを感じると、大悟は以前と同じように額のところで腕を交差させて振り下ろした。今度は自分の体が紫色一色に変わったのを見てとると、大悟は勢いよく飛び上がる。自分の体が空を飛んでいる、それにも驚きではあったのだが、大悟は体の変化にも驚いていた。赤色の体をしている時のように、体中に力が湧いてくる心地はしない。その代わりに、姿が変わる前よりも遥かに体が軽く感じられた。自分の動きの俊敏さに慣れるのにも手間取るほどだった。
滅琉羽と大悟の両者は湖の上
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