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TALES OF ULTRAMAN  鬼神の立つ湖
TALES OF ULTRAMAN  鬼神の立つ湖
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る、ありがとう」
 と大悟が思わず少し笑って口にすると、堀兵衛は美座伶の手をとってその場を離れた。利明もまた加美羅の巫女との闘いへと戻っていった。今、滅琉羽は湖の上を旋回しながら飛び廻り、こちらへ向かってくるところだった。護琉座ももはやすぐそこまで近付いている。
「大悟殿」
 気が付くと、すぐ隣に光命が立っていた。彼は大悟の目を見据えるとゆっくりとした口調で言った。
「共に行きましょう」
 大悟はゆっくりとうなずくと、滅琉羽が羽ばたく湖の方へ顔を向けて脈打つ神器を天にかざした。夕暮れの光をすっかり飲み込んだ暗がりの中に光が溢れる中で大悟は己の中に湧き上がるその名前を叫んだ。
「――逞我(ティガ)

 美座伶を連れて林の茂みへと身を隠した堀兵衛は湖岸から少しばかり離れた林に美座伶を匿うと、その場所から戦いの顛末を目撃した。大悟が神器を天に掲げた時、視界は溢れる光に覆われ、やがて目が慣れてくると、湖岸に二人の巨人が立ち尽くし、右手を肩のところで構えて、天に左の拳を突き上げているのが見えた。堀兵衛には何だかそれが、今しがた長き眠りから起き上がったとばかりに鬼神たちが伸びをしているようにもみえた。
 並び立つ巨人のうち、紫色の巨人、おそらくは大悟が変化した鬼神へ向けて滅琉羽が飛びかかってきた。大悟の鬼神は突撃してくる滅琉羽を組み伏せようと迎え撃つものの、敵は思う以上に素早かったようだった。大悟の巨神は突進をかわされたあげくに、あえなく鉤爪での攻撃を受けた。さらにそこへ護琉座が到達し襲い掛かろうとする。しかしこれは赤と銀色の体をした巨人、おそらく光命が変化した楚鳳なる鬼神が立ちはだかった。
 巨人と怪物が混戦しているさなか、思わず目をとられている正一郎や沢の爺、利明たちの目をかいくぐるように加美羅の巫女は化け物たちに向けて呪詛を唱えていた。まじないを受けた化け物たちのどう猛さがさらに増していくのを見てとると堀兵衛は声を張り上げた。
「あかん、巫女を止めにゃならん」
 加魅羅の様子に気が付いた男たちは一斉に加魅羅を取り押さえようとした。だが、彼女は蝶が舞うようにひらりとかわしてしまう。それでもめげずに正一郎が木刀を振りかざすと、加魅羅の巫女の目が大きく見開かれた。呪詛は今度男たちに向けて放たれた様子で、彼らはその場で金縛りのようにして身動きがとれなくなった。気が付くと、同じく堀兵衛も身動きを封じられている。加魅羅の巫女は懐から短剣を取り出すと、彫像のように固まった彼ら一人ひとりを見据えてこの上ない邪な笑みを浮かべた。
「さあ、誰からいこうかね」
 その声はあまりに禍々しく、今までに耳にしてきた美しい声とは打って変わって朽ち果てた老婆のような声をしていた。堀兵衛はその時に彼女の正体を垣間見たような気がして思わず鳥肌が立った。今まで自分たちが魅
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