TALES OF ULTRAMAN 鬼神の立つ湖
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こにいるんだ」
一人は寝起きのような声で言うと、他のものたちも口々に驚きを声にした。加魅羅の巫女の顔は今では血の気が失せ、強張った顔からは表情のかけらも見えなくなった。
「おのれ」
加魅羅の巫女が呟くような声で何かを唱え始めたのを目にして、大悟はもちろん、一同は身を固くして構えた。正気に帰った村人たちもおののくように加魅羅の巫女から後ずさっていく。
風を切るような音を聞きつけた時には、その影は大悟たちの頭上に姿を現していた。護琉座や大蛇と同じような大きさの怪鳥――嘴と翼を見るに鳥の類と見られる化け物が上空を浮遊し、獲物を吟味するように光る目をこちらに向けていた。
「滅琉羽」
と加魅羅の巫女が口にするのを聞いて、大悟はそれが怪鳥の名であると共にこの化け物は巫女の傀儡であることを悟った。
また、大悟たちがやってきた方角からは大地が轟くような音が聞こえてくると、土埃にまみれた巨大な影が闇夜のなかにぼんやりと浮かび上がるのが見えた。岩のような体ゆえに闇夜になじんでいたその影は勢いよく起き上がると、大きな牙を見せて咆哮を上げた。護琉座だった。大悟は驚くとともに、加魅羅の巫女の方を振り帰った。
「まさか、護琉座まで操れるのか」
不敵な笑みを浮かべる加魅羅の巫女はさらに呪詛を続けた。
村人たちは逃げ惑い、正一郎と沢の爺はそれぞれ太刀と木刀代わりの杖で加魅羅の巫女に向かっていくのだが、彼女は呪詛を唱えながらでも彼らの攻撃を交わすことが出来た。続いて利明と堀兵衛も加勢するが、なおのこと歯が立たない。
大悟は懐の神器が以前のように彼を気高く奮い立たせる鼓動を発し始めたことに気が付いていた。隣の美座伶としゃがんで向き合うと、大悟は優しく声をかけた。
「美座伶、行ってくるよ」
美座伶はどこか嬉しそうな顔をして元気にうなずいた。やはり不思議な子だ、と大悟は今更ながら考えた。美座伶には大悟が何をするべきなのか、どういう選択をするべきなのかすべてが先だってわかっている。そんな気がしていた。
見れば、堀兵衛が加魅羅の巫女に弾き飛ばされたところから体勢を立て直し、再び彼女へ立ち向かっていこうとするところだった。堀兵衛が巫女に向かっていく前に、大悟が呼び止めた。
「堀兵衛」
いつになく大悟が力強い声を発したのに少し驚いて振り向いた時、堀兵衛は大悟の顔を見て彼が何をしようとしているのか、それから自分に何を託そうとしているのかがすぐにわかった。堀兵衛は踵をかえして大悟と美座伶のもとへと駆け寄ると、大悟に力強くうなずいてみせた。
「安心せい、美座伶はわしらでしっかり守る。お前は遠慮なく思いっきりやってこい」
それから利明がこちらを向いて言った。
「こっちは任せろ――でも、いくらか気をつけてくれよな。俺たちを踏んづけないように
「わかって
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