TALES OF ULTRAMAN 鬼神の立つ湖
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ていた。
「何を探していたんだ、美座伶。こんな夜中だというのに。明日じゃ駄目だったのかい」
すると、美座伶は首を振った。
「もう、見つけた」
そう言って美座伶が手に持っていたそれを掲げると、大悟と堀兵衛はそれをじっくりと眺めた。巫女が祭や祈祷で使う神器にも似ている。だが実際にそれが神器なのかどうかはわからなかった。大悟はすぐ横にあった堀兵衛の顔を覗き見たが、堀兵衛もそれが何のためのものなのかはよくわかっていない様子だった。大悟はすぐに神器に目を戻した。
祭りで見る宝剣の柄にも似てるが、それにしては刃がなかった。乳白色の柄の先には閉じた鳥の翼を象ったような飾りがついており、真ん中の切れ目があるところからひょっとすると、本当に羽根のように開くのかもしれない。全体が水晶のような部分や鉱石のようなもので出来ていて、ところどころが金色に縁どられている。そのきめ細やかな美しさに大悟はついつい目を奪われた。
「美座伶、これは置いて行った方がええ」
堀兵衛がその神器を眺めてしばらくしたあとに重々しく口にした。
「これはおそらく神様のもんや。みだりに人の子が触らん方がええ。祟りを食らうかもしれん」
けれども、美座伶は首を激しく振ると、一層強くその神器を胸に抱いた。困ったもんや、と口に出さずに目配せをしてくる堀兵衛にと美座伶を交互に見て、大悟は言った。
「よし、わかった。美座伶。これはお兄ちゃんに預けておくれ。美座伶の大切なものであればお兄ちゃん必ず守ってみせるから」
すると美座伶はこう言った。
「これ、美座伶のじゃない」
そして、美座伶はその神器を大悟に差し出した。
「これ、お兄のもの」
もちろん、大悟には美座伶の言っていることの意味はわからなかった。けれども、きっと大悟や他のものにはわからない意味があるのかもしれない。おそらくは美座伶自身にもうまく説明出来る類のことでないのを大悟は見て取った。それに、まっすぐ神器を差し出す美座伶の眼差しがあまりにも迷いないことにも気圧されていたのだった。
大悟はとうとう戸惑いながら神器を手にとった。その時に、大悟には確かにその神器が手の中で一瞬脈打ったように思えた。しばらく呆気にとられて神器を眺めていると、堀兵衛が横でぶつくさ言うのが聞こえてきて我に返った。
「とにかく早く帰ろうや。月が雲に隠れでもしたら真っ暗な森のなかやで。わしはそんなんいやや」
大悟は我に帰ってそうだね、と返すと神器を懐にしまった。美座伶から受け取ったあとはこっそり森のどこかに返しておこうと考えていたのだが、大悟はそれを手放してはならない気がしはじめていた。美座伶の言う通り、この神器と自分の間には何かしらの縁があってこの手に渡ってきたのかもしれない。
もと来た見た道をいくらか戻ると、途中で先頭を進む大悟に堀
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