第五百七話 和歌山の馳走その四
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「構わないぞ」
「どちらでもですね」
「そうだ、いい」
「では間違えます」
「うむ、魂は同じだからな」
「それでは」
「君は一体何を言っているんだい?」
薙切は今度はコメカミに血管を浮き上がらせて緋沙子に問うた。
「一体」
「申し上げた通りです」
「僕が刺されてもいいのかな」
「以前の様なら」
「以前ならかい」
「えりな様を思いのままにされるおつもりなら」
それならばというのだ。
「私はあくまでえりな様をお護りしますが」
「心外だ、僕も考えをあらためた」
「左様ですか」
「だから朝陽もいるんだ」
「呼んだか」
ここでやや影のある黒髪の鋭い目の男が出て来た、もう浴衣姿である。
「俺のことか」
「いえ、お兄様は何処にと言ったかでして」
えりながその彼才波朝陽に答えた。
「主にお父様のことで」
「何だ、俺のことじゃないのか」
「はい、特に」
「そうか、ならいい」
「それでは」
「全く。ようやく落ち着いてこうしてこの場にも顔を出せる様になったというのに」
薙切薊は憮然として述べた。
「僕はつくづく人望がないな」
「その外見だとな」
「やっぱりね」
剣也と良太が述べた。
「何かスサノオの方にいてもおかしくないし」
「胡散臭いよな」
「ぶっちゃけ詐欺師よね」
「そう見えるわね」
アリス=ロンドとクロエ=オベールも言う。
「料理人の人と思うけれど」
「あまりそうは見えないわね」
「あの、本当に料理人ですか?」
ゲイルは実際にこう尋ねた。
「裏の人でなくて」
「違うと言っておく、僕は料理人だ」
薙切薊はそこは断った。
「それ以外の何者でもないよ」
「いや、絶対に裏社会と結託しているである」
パイマンは本人を指差して言い切った。
「その目を見ればわかるである」
「はい、そうした世界にいる目です」
ロレンツォも言い切る。
「その目は」
「絶対に相当悪いことしてるわね」
タツマキが見てもだった。
「悪事の匂いがして仕方ないわ」
「うちの組織はどうですか?」
梶井は真剣に誘いをかけた。
「幹部クラスで」
「だから僕は料理人だ、皆マフィアとでも思っているのかな」
「誰がどう見てもそうですよね」
「そうだね」
美親はアルテミスの言葉に頷いた。
「人は外見で判断したら駄目だけれど」
「それでも」
「この方は行いを聞いても」
「間違いないね」
「吾輩は信じているであるであろーー」
ヴァレンティーノは暖かい声で述べた。
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