第78話 作戦と事業
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暇ではなくなるのだからな」
「それはエル=ファシルの英雄が所属する第八艦隊司令部に任せた方がよろしいかと小官は愚考いたしますが」
「まさしく愚考じゃが、無理だと承知の上で粘り腰を見せるその態度は、儂は嫌いではないぞ」
ポンポンと軽く俺の肩を叩く爺様の、それはそれは怖い笑顔に、俺は頷かざるを得なかったと同時に、いつかファイフェルを書類地獄に叩きこんでやろうと決意するのだった。
しかし決意したところで何も物事は進まない。取りあえず幕僚事務室に戻ってニコニコ顔でデスクを整理しているファイフェルの太腿に一発蹴りを入れた後、これまた机上の書類を纏めているカステル中佐に軽く話しかけた。
「中佐、こういう場合、政府と軍が双方で船を出し合うことはあり得ますか?」
「ない。政府が船を出すなら軍が費用を出す。軍が船を出すなら政府が費用を調達する。エル=ファシルの場合は緊急避難法による民間船徴用条項が適用されていたはずだ。でないと、あとで揉める」
その辺は法務士官に聞いておいた方がいい、とカステル中佐は中身のほとんどなくなった鞄を机の上に置いて言った。
「それと一応頭に入れておいた方がいいのは、地域社会開発委員会は最高評議会の委員会でも予算配分が少ないので、属僚もドケチ揃いだということだ。予算を軍が持ち逃げしていると考えている風土がある。特殊法人である事業団の予算は中央政府の別枠持ちのはずだが、一ディナールでも浮かせようというのは、財務官僚に限らず誰もが考えていることだ」
ということはあらかじめ相手の財布の中身を知っておいてから話を進めるべきだろう。こちらでも算定してからアポイントを取った方がよさそうだし、使える者は無駄飯ぐらいでも使うべきだ。勿論、本人は嫌だろうが。
「ご指導ありがとうございます。ちなみに中佐は、休暇はどうされるんです?」
「これでも結婚しているんだ。家族サービスくらいする」
「「え?」」
俺と、聞き耳を立てていたファイフェルが同時に声を上げると、モンティージャ中佐は咳き込むように笑う。しかし、一応この世界に長く残っている伝統としての左手薬指の拘束具がカステル中佐にはない。
「ボードを叩く邪魔になる。だからしてないだけだ」
めんどくさそうにそう応えると、その拘束具のない左手に鞄を持ち、軽く右手で敬礼すると部屋から出ていく。残された独身三人のうち、若い俺とファイフェルがモンティージャ中佐を見ると、部屋の扉が閉まってから数分後、大声で中佐は笑って言った。
「言いたいことは、そういうことじゃないんだよな。わかるぜ、二人とも」
その笑い声は重なるごとに大きく、ブライトウェル嬢が珈琲を四つもって入室してくるまで続いたのだった。
そして翌日。席が半分空席になった司令部だったが、いつものようにブライトウェ
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