第78話 作戦と事業
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スターテにいる敵哨戒隊の目を引き付け、その隙にエル=ファシルまで進出した地理案内の明るい第四四高速機動集団がアスターテ経由でダゴンまで、跳躍宙域にある偵察衛星や残っている小規模の哨戒隊を蹴散らかしつつ進撃する。分進進撃を戦略的に行うといったところだ。
作戦指揮は遠征軍主力である第八艦隊のシトレ中将が執り、同艦隊司令部が主導的に作戦立案を行うことになるが、軍事常識から考えてもこちらの想定以上の作戦を提示してくるとは思えない。作戦は機密を要し、帝国軍の大規模な機動部隊の出動は避けなければならない。偽装的な訓練や、対外情報工作も必要となるだろう。逆に言えば帰還事業関連以外のこちらの準備も悟られないように行わなければならない。
もし第四七高速機動集団が参加するとすれば、『前回のリベンジ』という視点を加えた訓練出動することができるが、それは叶わない。代わりに独立機動部隊が複数参加することになる為、作戦指導に関わる人間が増大することになり、情報統制も困難になるだろう。まぁ、その仕事をするのは第八艦隊司令部がすることで、我々は必要な情報を集積しつつ、考えうる限り作戦行動を想定し、それに対処する準備を整えておくことだ。物資の調達に関しては、訓練終了と共に充足は済ませてあるので、作戦行動計画に合わせる分のみで十分だ。
「儂らが休暇から戻ってくる頃には、ダゴン星域に到着するまでの行動計画草案ができていると、儂は信じておる。第八艦隊司令官からも、同艦隊幕僚部と協力を密にしてほしいという事じゃ。ジュニア。そう嫌そうな顔をするな」
表情には全く出していないつもりだったが、爺様は瞳だけこちらに向けて言う。つまりはシトレとの連絡調整はお前がしろと言っているのも同じことではある。
「儂らの不在時はモンシャルマンが集団司令代行、モンティージャが参謀長代理として対応する旨、麾下部隊指揮官には伝えてある。大事でもない限りは、貴官らで適時対処せよ。報告は後でよい」
「承知いたしました」
モンシャルマン参謀長が改めて頭を下げると、爺様も頷いてそれに応えた。これで二週間。前回のエル=ファシル攻略作戦同様の司令部缶詰ウィークが始まるわけだ。ところが……爺様は体を変えて改めて俺を見つめる。行動計画の立案は面倒で疲れる仕事だが、経験もあることだし大きな問題はないはずだ。見ればファイフェルのニンマリとした笑顔が、何となく悪い予感を誘う。そしてそれは正解だった。
「ジュニアは行動計画とは別に、エル=ファシル帰還事業団との業務調整も行え。事業団は地域社会開発委員会の傘下、特殊法人となる。船舶調達補助やらいろいろ言ってくるじゃろうから、『適切に善処』すること」
「えっ?」
「マーロヴィアで鍛えた行政との調整能力を存分に発揮せよ。モンシャルマンもモンティージャも、早々に
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