第三章
[8]前話
「あんたそう言う割にはね」
「どうしたの?」
「随分楽しそうね」
こう言うのだった。
「どうにも」
「それはね」
否定しない返事だった。
「退屈しないし愛嬌があって何かと癒されて」
「悪いこと以上によね」
「遥かにいいことをいつも貰ってるから」
文音に微笑んで話した。
「一緒にいてね」
「いいのね」
「そうよ、これからもね」
「一緒に暮らしていくのね」
「そうしていくわ、これからも変わらないわ」
「ニャア」
沙都美が文音に笑顔で答えるとだった。
マロンは起きてそのうえで二人のところにゆっくりと歩いてきた、そして二人が囲んでいるテーブルの上に上がってだ。
自分の存在を誇示する様にその真ん中で座り込んだ、文音はそんな彼女を見て沙都美に対して尋ねた。
「これはどういうこと?」
「自分を見ろってことでしょうね」
沙都美はこう答えた。
「二人だけでお話してるからね」
「それなら自分を見ろって言うのね」
「自己主張してるのよ」
「そうなのね」
「これが猫よ、我儘でしょ」
「犬だとこうした時家族のところに来ても何お話してるのってお顔向ける位よ」
文音は自分の愛犬のことから話した。
「本当にそこはね」
「猫はこうだって思うでしょ」
「よくね。本当にそれが猫ね」
「そうよ、悪いでしょ」
「かなりね。けれどね」
文音も微笑んだ、そうして沙都美に話した。
「いいわね」
「そうでしょ」
沙都美も笑顔で応えてだった。
自然と猫用のじゃらしのおもちゃを出した、それをマロンの目の前でふりふりと動かして彼女を刺激してだった。
前足を出させて遊んだ、沙都美も文音もそんな状況を見て笑顔のままでいた。そうして猫のよさを実感するのだった。
善良な猫なぞいない 完
2022・8・28
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