第二部 1978年
ソ連の長い手
恩師 その2
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ンの事を笑い飛ばした。
「ほう、頭でっかちな男と思っていたが中々情熱的なんだな」
そう告げると、立ち尽くすユルゲンに背を向ける。
「今の事は見なかったことにしてやる。
同志ベルンハルト、代わりに腕立て伏せ100回とグランド3周を命ずる」
そう吐き捨てると、演習場へ踵を返した。
その言葉を聞いたユルゲンは、姿勢を正して、敬礼した。
「了解しました。同志教官」
『どこに居るのだよ。ベルンハルト候補生よ……』
あの輝かしいばかりの笑顔を浮かべる男が、酷く懐かしく感じられた。
「同志大佐、ハバロフスクは何と言ってたのですか」
その一言で、再び現実に意識を戻した彼は軍帽の鍔を押し上げる。
「どうもこうもあるか。通信途絶状態なのだよ」
象牙製のシガレットホルダーを取り出すと、両切りタバコを差し込む。
米国製のオイルライターが鈍い音を響かせ、蓋が開く。
ジッポライターで火を点ると、紫煙を燻らせた。
「東欧に舐められ、日本野郎にまで好き勝手を許した。此の儘じゃ赤い星も地に落ちる」
(赤い星はソ連赤軍のエンブレムで、赤軍の事を指し示す)
「如何に立派な船でも船頭が愚かならば嵐に遭わずとも沈むのは避けられまい」
ゲルツィンは紫煙を燻らせながら、一人沈みゆく祖国・ソビエトを想う。
再び背凭れに寄り掛かると、瞼を閉じた。
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