残骸と悪夢
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い!」
火の手も少なくない中、ハルトはともにムーンキャンサーと戦った仲間の名前を呼ぶ。
だが、その声はただ夕焼けの中に反芻するだけだった。
コウスケだけではない。
マンションの住民が、誰一人としてその姿を現さない。
誰でもいい。生き残りはいないか。まだ、ハルトが助けるのに間に合う生き残りは。
触手の怪物の襲撃を潜り抜け、マンションの崩落に巻き込まれても、生き残りはいないか。
「……っ!」
いるわけがない。
ハルトはその事実に、力なく膝を折った。
より強くなっていく雨。空を見上げていると、ハルトの視界がだんだんとぼやけていった。
___違う……_____じゃない!___
_______はどこ!? _____を返して!___
暗い、雨。崩落した建造物の中、ただ一人泣き叫ぶ少年。
そして、瓦礫の中から、顔を覗かせる少女。
「あああああああああっ!」
ハルトは記憶を振り払う。
「違う……違う違う! 俺は何もやってない! 俺じゃないんだ……俺じゃ……! いや、俺が……俺がやったんだ……!」
膝を折ったハルト。すると、ビチャリと水の音が鳴った。
だんだんと過去の光景と類似していく。
崩壊した建物。火。そして、体を凍てつかせる雨。
だが。
何かが落ちる音がして、ハルトは我に返った。
内側からどかされた瓦礫。そして、その中から現れたのは。
金色の指輪を付けた手。
「コウスケ!」
ハルトは即座にその手を掴む。
左手で引きながら、右手で指輪を発動。
『ビッグ プリーズ』
ハルトは魔法により、腕を巨大化。その腕の周囲にある瓦礫を退けた。
「コウスケ!? 大丈夫か!?」
瓦礫を粗方片付けると、呻き声を上げながらも、命に別状が無さそうなコウスケの姿があった。
頭から血を流しながらも、ビーストという異能の力によって生存能力を高めたコウスケ。彼を引っ張り出したハルトは、そのままコウスケを横にする。
「悪ぃ……これ以上は無理だ」
コウスケが苦しそうに答える。
ビーストという鎧に守られてはいたものの、ムーンキャンサーの猛攻とマンションの質量に襲われた彼が五体満足で生き延びたのは奇跡に等しい。
だが、あちらこちらがすでに満身創痍となっており、これ以上の戦いを望むのは無理というものだろう。
「お前……まだ、動けるのか?」
「あ、ああ……」
頷いたと同時に、ハルトの全身が痛みを訴えた。
体勢が維持できなくなり、コウスケの前で崩れる。だが、すぐさまに肩を奮い立たせた。
「奴は……」
ハルトは唇を噛みながら、ムーンキャンサーが飛び去って行った方角を睨む。
す
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