第三章
[8]前話
「聞いた話だとな」
「そうなの」
「あそこも随分やられたが」
オストミルもというのだ。
「けれどな」
「お家は無事なのね」
「幸いにな」
「そのことは嬉しいわ」
妻は素直にその気持ちを述べた。
「よかったわ」
「そうだな、けれどな」
「それでもよね」
「ああ、ベリイは」
「どうかしら」
「いて欲しいが」
心からだ、一家で思うばかりだった。
そして家に戻ると家は無事だった、周りは壊れた家も多かったがそれでも一家の家は無事であった。
妻はこのことにほっとした、しかしここでも言った。
「やっぱりベリイはね」
「いないか」
「無事ならいいけれど」
「そうだな」
「あっ、お母さん見て」
「あそこ見て」
上の娘のターリャと舌の娘にアレクサンデラがだった。二人共母親似だ。
家の向こうを指差した、すると。
「ワンワンワン!」
「ベリイよ!」
「ベリイが来たよ!」
「こっちに来るよ!」
「物凄い速さで!」
「おい、間違いないぞ」
夫もその犬、白で下半身に黒いものが混ざっているハスキー犬を見て言った。
「あれはベリイだ」
「そうね」
妻も見て言った。
「あの子は」
「無事だったんだな」
「そうね」
「よかったな」
夫は心から言った。
「ベリイも無事で」
「そうね、まだ戦争は続くけれど」
「希望があるんだ、終わったら」
戦争がというのだ。
「また幸せに暮らせる」
「その時まで頑張ることね」
「今はな」
夫は妻に言った、そうしてだった。
一家は家での暮らしに戻った、そこはベリイも一緒だった。戦争はまだ続くが彼等は幸せな生活に戻ることが出来た、そのうえでウクライナ全体に幸せが戻ることを願った。
戦禍の中の愛情 完
2022・8・27
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