敢闘編
第四十七話 不本意ながらも
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
つか化けの皮が剥がれるさ…そう思われても仕方がない。しかし私は前線に出てみて気づいたのだ。貴族としてこれでいいのかと」
「貴族として、ですか?」
「そうだ。帝国の藩屏などと聞いて呆れる、今まで私は何をしていたのだろうか、とね。…私は伯爵家に生まれた。だから周囲の環境について何ら疑問を抱かなかった。酒を楽しみ、競走馬を愛でて、一門や他家との付き合いに思案を巡らせ、園遊会や宮中行事にて皇帝陛下の覚え良き事を祈り、ヒルデスハイム家の勢力を伸ばす…家を継いだからにはそれが一番大事な事だと。これが当たり前なのだと」
「はい…伯爵家当主としてのお立場が…」
「うむ。前線に出た理由も、一門たるコルプト子爵の醜態の後始末をつける為だった。一門の恥は一門の誰かが拭わねばならぬ。当家の艦隊は約一万隻、叛乱軍なぞ恐るるに足らん…と軽く考えていた」
「まことに言い難き事ながら、そうではなかった、と…」
「そうだ。叛徒共にしてみれば、帝国軍だろうが貴族であろうが関係ないのだからな。無事還れたからよかったものの、そうでなければ卿とこうやって話してもおるまい…まあ、ブラウンシュヴァイク公は卿等が来ると知って嫌な顔をしたようだが、私としては本当に感謝している。再び前線に出るならば、優秀な補佐役は必要だからな」
「…再度前線に立たれると仰るのですか?」
「うむ。帝室の藩屏たるもの、やはり前線にて戦わねばな。それに用兵術にも興味があるのだ」
「…恐れながら申し上げますと、用兵に関しましては付け焼刃ではいかんともしがたいものがございます」
「だから卿等がいる。私は卿等に期待しているし感謝しているといったのも嘘ではないぞ。それにだ、私をうまく補佐できれば、卿等の評判は上がるぞ。ただでさえ貴族の艦隊はお荷物と思われているのだからな」
「お荷物などと、そんなことは…」
「隠さずともよい。私も含め先日のフレーゲル、シュッツラー達がそれを証明したではないか。私が考えを変えたのもそこに一因があるのだ。このままではいかん、とな。改めてよろしく頼む、ミューゼル少佐」
伯は頭を下げると、食堂を出て行った。
私をうまく補佐できれば、か…。経緯はどうあれ確かにチャンスかもしれない。大貴族の庇護下にあるというのは虫唾が走る思いだが、贅沢は言っていられない。功績を上げて早いうちにここを抜け出そう、なあキルヒアイス…。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ