敢闘編
第四十七話 不本意ながらも
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なりながらこちらに駆けてくるラインハルト様の姿があった。
「キルヒ…シューマッハ中佐、伯がお呼びです」
「了解した。伯は何の御用か仰っていたか?」
「いえ、ですが先ほど宇宙艦隊司令部より伯宛てに命令が届いた様です。多分その事についてだと。小官にはそのまま昼食を摂って来いと…」
「了解した」
シューマッハ中佐は残りのヌーデルンを急いで口に入れると、小走りで食堂を出て行った。
「やあキルヒアイス。美味しそうなシュニッツェルだな。俺もそれにしよう」
そう言うとラインハルト様はカウンターに向かって行った。
ここはヒルデスハイムの首都、ハノーファー。第一〇一遊撃艦隊、通称ヒルデスハイム艦隊の根拠地でもある。当然ながら名前のとおりヒルデスハイム伯の領地だ。
昨年叛乱軍によって我々の乗艦ハーメルンUが拿捕された案件は、相当上層部の肝を冷やした様だった。運良く解放されたものの、その後ラインハルト様と私は軍務省勤務となった。拿捕された事自体は状況から見てやむを得ない事とされたが、そこに我々二人が居たことが問題になりかけた。ラインハルト様のお立場に今更ながら軍務省の上層部が気づいたのだ。非常に不本意な事ながらも、ラインハルト様は皇帝フリードリヒ四世の寵姫の弟なのだ。そのような存在が叛乱軍に拉致されたらどうなるか。拉致される事自体は問題はない…戦争遂行中であるから、ある意味仕方のないことでもある。しかし皇帝に近しい存在が拉致される…実際にそのような事が起きたら…軍に対する皇帝の心証はどうなるか…当然良いものではあり得ないだろう。遅まきながら軍上層部はそれに気づいたらしい。疎まれている事は幼年学校時代から解っていたが、ある意味ここまで気を使われる存在だったとは私やラインハルト様もこうなるまで気が付かなかった。
“武勲を望んで前線に出たがるのは分かるが、軍としては卿等に死なれても困るのだ。卿の御姉君の立場を考えてもみよ”
軍務省勤務が不満気なラインハルト様に、そう直言する上官もいた様だった。
「疎まれている上に手足も縛られるとは…迷惑をかけて済まないな、キルヒアイス」
この状況から救ってくれたのは現在の上官、ヒルデスハイム伯爵だった。
軍に復帰した伯は、参謀を探していた様だった。伯の出自からして、ブラウンシュヴァイク一門の貴族の子弟が伯を補佐しても良さそうなものだが、伯は一門ではなく軍に人材を求めた。
伯のこの動きについてブラウンシュヴァイク公は半ば不審に思い、半ば面白がっていたらしい。だが、
”一門の中に軍事に練達な者がいてもよかろう“
と軍務省に掛け合った。だが貴族艦隊に配置されるとなると出撃する事が少ない訳だから、当然武勲を立てる機会は減る。扱いも酷い場合が多いから、誰も行きたがらない。そこで我等二人にお鉢
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ