第五百六話 男湯の方その十
[8]前話 [2]次話
「最悪だったぜ」
「そうだな」
「そうなったらもうな」
「終わりだな」
「本当の意味でな」
「力を持っても溺れない」
黒千も考える顔で述べた。
「この戦いではいつも考えさせられることの一つですね」
「そちらの世界でもいたな」
「はい、首相の秘書だったあの男です」
黒千はゴウセルに答えた、その顔のまま。
「最後は世界を滅茶苦茶にしました」
「その者もまさにです」
デミウルゴスも言ってきた、彼が聞いてもその男のことはなのだ。それで湯舟の中で真剣な顔で言うのだった。
「力を得て」
「溺れましたね」
「そうした輩でした」
「力を得ても溺れるとどれだけ恐ろしいか」
ビリー田中は湯舟の中で腕を組んで言った。
「僕達の世界でもわかっていましたが」
「それぞれの世界を行き来するとだな」
「余計にわかりました」
照井にこう答えた。
「人間でなくなるんですから」
「君は人間らしい」
「そう言ってくれますか」
「だが本当にな」
「力を持った時こそですね」
「注意することだ」
ビリー田中もというのだ。
「本当にな」
「さもないと伊坂達みたいになるんですね」
「誰でもな」
「それが怖いですね」
「だからこれからもだ」
「注意していきます」
照井に真面目な顔と声で答えた。
「僕も」
「その様にしてくれ」
「力に溺れるなぞ小者」
芥川は一言で述べた。
「所詮は」
「では力はどう使うかはわかっているな」
「無論」
アンクにも一言で答えた。
「太宰さんにだ」
「お前はそうした考えだな」
「やそがれの考えは変わらぬ」
絶対に、そうした言葉だった。
「どの世界においてもな」
「吸血鬼になってもか」
「同じだ、我は我だ」
あくまでというのだ。
「変わることはない」
「人間のままだな」
「そうだ、だから力に溺れることもだ」
「ないな」
「そうなる様に心掛けているしな」
「それならそれでいい、あとだ」
アンクはここでこうも言った。
「風呂から出たらだ」
「アイスだよな」
「一本食う」
隣にいる火野に答えた。
「そうする」
「お前はアイスだよな」
「アイスを食わないとだ」
さもないと、というのだ。
「俺ははじまらない」
「そうだよな」
「あんな美味いものはない」
「味も好きなんだな」
「何よりもな」
「そうだよな、味がわかるのもな」
「人間だな」
火野に目を向けて問う様にして言った。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ