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捨てるパン
第一章

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               捨てるパン 
 父からパンを受け継いだ羽生敏夫大きな口と切れ長の小さな目と黒く刈り込んだ髪に四角い顔を持つ一七二程の彼には悩みがあった、店は幸いにして繁盛しているが。
「やっぱりどうしてもな」
「売れ残り出るでしょ」
「採算は採れてるけれど」
 母の涼子切れ長の大きな目とホームベース型の顔に大きな赤い唇と高い鼻黒く長い髪の毛に長身の彼女に夕食の時に話した、今父は盲腸で入院中で家にはいない。
「それでもな」
「売れ残ってね」
「捨てるパンはどうしても出るな」
「毎日ね」
「俺としては」
 敏夫は苦い顔で話した。
「作ったパンは全部だよ」
「売れて欲しいわね」
「折角作ったんだから」
「食べものだしね」
「全部売れて欲しいよ」
「そうよね」
「どうしたものか」
 夕食の鰯を煮たもの生姜で味付けされたそれを食べつつ言った、中華風の卵と野菜のスープにザワークラフトもある。
「残ったパンは」
「閉店間際は半額にしたらね」
「やっぱり売れるよ」
「半額は大きいわ」
「けれどそれでも残るから」
 それでというのだ。
「残る時は」
「それは捨てるしかないわね」
「そのパンどうしようか」
 彼は真剣に考えていた、そして。
 退院してきた父の克実息子にその顔を受け継がせている白髪の彼とも相談したが。
 彼もこれといってだった。
「俺もずっとどうしたものかってな」
「思って店やってたんだな」
「ああ、そうだったんだよ」
 こう息子に話した。
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