第77話 手紙
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
生が三流の政治業者というなら、小官も同じ三流の軍人ですよ」
先は長いですが一歩一歩進んでいきましょうよ、と長期治療に臨む患者に対するような言い方でいうと、そういうものかねと、不承不承といった表情でアイランズはコーヒーを啜るのだった。
◆
休暇五日目となる翌日、アイランズは昼過ぎに一人でハイネセンに戻るということで、ランチを一緒に食べて分かれると、俺もいい加減一人での砂浜遊びに飽きてきたので、国立公園に指定されている森林地帯や、放牧地をブラブラと回りながら、四日がかりでハイネセンに戻ってきた。
グレゴリー叔父の官舎に立ち寄ってイロナやラリサに、放牧地で買った大きな競走馬のぬいぐるみや使用済みの蹄鉄をプレゼントして一泊後、単身者用の士官官舎に戻ると、案の定山のような手紙と通信文が届いていた。
ほとんどが俺の長期休暇を後で知った友人知人の恨み辛み(特にウィッティの恨み節は酷かった)だったが、一つだけ気になる手紙があった。正確には知人でも友人でもないが俺が知っている相手で、連絡先の番号だけが書いてあった。『どうせアンタは捕まらないでしょうけど』、と余計なことも書いてある。
連絡先に電話すると、相手はハイネセンの第四民間宇宙港の展望デッキを指定してきた。時刻は今官舎を出てギリギリ間に合うか間に合わないかという時間。俺はボロの私腹を纏って官舎を飛び出し、無人タクシーと超高速リニアを乗り継いで、予定の四分前に展望デッキに辿り着いた。
民間商船の貨物取扱港である第四民間宇宙港の屋上は広いが、大半がターミナル用の設備機器で覆われており、展望デッキと言っても小さな売店と自販機、それに傘の付いたガーデンテーブルが並べられているだけであり、目的の人物はそのうちの一つに、いかにもつまらなさそうな表情で座っていた。
「ミセス・ラヴィッシュ?」
俺がそう問いかけると、鋭い目つきが金髪の向こうから俺を突き刺してくる。じっと数秒、俺を睨んだ金髪ポニーテールの彼女は、どうやら本物のようね、と小声で毒づいた。
「ヴィクトール=ボロディン『少佐』で良いのかしら。第四四高速機動集団の次席参謀とやらの」
「えぇ、で、貴女がミリアム=R=ラヴィッシュさん、ということで良いんですね?」
「そうよ。独立商船ランカスター号の船務長補佐をしているわ」
握手するまでもなく、彼女は細い手を自分と対面の席に向ける。座れということだろう。俺は遠慮なくガタつき音のする椅子を引いて座ると、彼女はテーブルの上に置いた小さなバッグの中に手を伸ばし、中から一枚の封書を取り出した。
「貴方宛の手紙。先方は返事を期待しているから、なるべく早く読んで、返事を書いて。船がハイネセンにいる間は私が返事を受け取るけど、あと三日もすればフェザー
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ