第77話 手紙
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宇宙歴七八九年一〇月二二日 バーラト星系惑星ハイネセン サームローイヨート
チンピラモドキをのした後、俺は普通に到着した警察に任意同行を求められ、監視カメラとチンピラモドキの前科と俺の身分証の結果、あっさりと無罪放免となり、夜明け前には警察の車でホテルに戻ることができた。
しっかりとした睡眠をとることは当然出来なかったので、黒札をドアノブにかけてそのままベッドに横になると、次に起きた時には、昼も半ば過ぎた時間だった。レストランでランチを食べるのも億劫なので、シャワーでひと汗かくと、ドア下にレターが挟まっていた。
一応司令部には宿泊地を連絡してはいるが、こんな形で呼び出しをかけるはずがない。ホテル側の配慮とも考えるが、前世の場末のホテルのような売春宿の紹介でもないだろうし、炭疽菌テロなんて喰らうほどのご身分ではないから、手に取ってみると普通にディナーのお誘いだった。
「……ヘラルド=ペニンシュラ氏、ね」
もう少し捻りを利かせることは出来んのかな、とフェザーンで偽名を使った俺としては思わんでもない。が、タダ飯にありつけると思えば、それほど悪いとも思えない。政党助成金か公費かリベートか献金か、元手はかかってないとは思うから、彼としても気安いのだろう。指定されたレストランはホテル内にあるそれなりに格式のあるものでお安くはないが、元々が亜熱帯のリゾートホテルだ。ラフな格好をしても問題はない。
一応格式としての軍服は用意してあるが、公式のディナーとは先方も望んではいないのは間違いないので、私服でかまわないだろう。一応手櫛と無精髭を剃って、指定された時間の一分後にレストランの入口に辿り着けるよう時間を潰していく。
「よく来てくれた、少佐」
レストランのウェイターに案内された先は個室で、おそらくこのレストランで最高の格式のある部屋だろう。風通しのいい木格子の仕切りが巧みに配置され、開けている雰囲気にも関わらず周囲とは隔絶されたテーブル席。そこに薄黄色のサマージャケットを着た、『ペニンシュラ』氏が待っていた。
「お招きありがとうございます。ペニンシュラ『さん』」
「いやいや。恩人に報いるにこのくらいしかできないことを許してほしい。ここがハイネセンであればもっといいところを紹介できるんだがね」
「いえ、小官にはここでも十分すぎるほどです」
「そうかね。そう言ってくれると嬉しいが」
まぁ愛人と一緒にバカンスしているところを襲われて怪我でもしようものなら、いいマスコミのネタだからな。この時期のアイランズは、まだ銀の壷をかの人物に送ってはいないだろうし、閥の中でも大して高い位置にいるとは思えないから、すっぱ抜かれたらあっさり切り捨てられる立場と推測できる。つまりこれは口止め料ということだろう。ここはハイ
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