第一章
[2]次話
マンションの住人
力道合馬はこの時昔からの友人である丘発彦を結婚と共に入ったマンションに案内してそのうえでだった。
妻の麻里子と共に三人で飲んで食べていた、そして。
丘はふとだ、力道に言った。肉体労働の仕事らしく大柄で筋肉質であり鋭いが優しい光を出している目と引き締まった唇に長方形の顔と短い髪の毛を持っている。
その彼がだ、力道に言った。
「ちょっとトイレ行って来るな」
「ああ、場所わかるか?」
「玄関からすぐ左だろ、風呂と別の部屋の」
「あれっ、何でそこまで知ってるんだ?」
「俺前このマンションに住んでたんだよ」
自分より少し背が低く痩せていて卵型の顔に穏やかな顔で癖のあるやや長い黒髪の力道に対して答えた。
「実はな」
「えっ、そうだったのかよ」
「三階に住んでたんだよ」
「同じ階じゃないですか」
麻里子はその話を聞いてこう言った、茶色のショートカットで丸めの頭に大きな唇とアーモンド形の目を持っている、背は一六九位ですらりとしている。力道とは職場で知り合い今も同じ会社で働いている。
「それじゃあ」
「そうだよな」
「だからお前に案内されてだよ」
丘は力道に笑って話した。
「俺の家じゃねえかってな」
「前のか」
「思ったよ」
「そうだったんだな」
「だからトイレの場所もな」
「知ってるんだな」
「そうなんだよ、あとな」
丘はここでだった。
こっそりとだ、力道に言った。
「五〇四号室だけれどな」
「五階か」
「あそこの人実は凄い人らしいんだよ」
「どんな人なんだ?」
「同じ五階の人から聞いたけれどな」
こう前置きして話した。
「占い師らしいんだが」
「占い師か」
「ああ、渋谷の方でやってる」
「へえ、渋谷か」
「あそこにお店持っていて物凄い腕らしいんだよ」
「そんな人がこのマンションにいるんだな」
「俺もちらっと一度だけ見たけれどな」
その五〇四号室の人間にというのだ。
「ホスト風のかなりのイケメンだよ」
「そんな人か」
「そんな人もここには住んでいるってな」
「そのことをか」
「頭に入れておいてくれよ」
「別に怨霊とかがいなかったら」
麻里子はそれならと話した。
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