出前
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「ふう……」
雨合羽を畳んだハルトとコウスケは、それぞれ出前の注文があった場所に辿り着いた。
ラビットハウスから少し離れた川岸に位置している大きなマンション。長らくその地に根付いているらしく、少しヒビが入りながらも、それは地域の人々から長らく愛されているようにも感じる。
「やっと着いたか……」
「ここまで雨が強いとバイクでも面倒になるもんだな」
ハルトに続いて、マシンウィンガーから降りるコウスケ。
背負った出前箱が揺れないように支える彼は、ハルトに続いてマンションのエントランスに入って来た。
「あれ? 停電かな」
エントランスに一歩足を踏み入れた途端に、ハルトの口からその一言が漏れ出た。
外の雨の気温がそのままエントランスの中に伝わっているような感覚。体が寒さに痙攣を覚えるが、構わずに管理室の窓口へ向かう。
「こんにちは。ラビットハウスです。出前で来ました」
管理室の内部へ声をかけるが、返答はない。しばらくしてからカウンターに設置されているベルを鳴らし、管理人の姿を待つ。
だが。
「……来ないな」
「見回りじゃねえの?」
「だったら、立て看板とか置いてよさそうなものだけどなあ」
ハルトはカウンターから中を見渡す。
だが、電気が切れた管理人室は、もぬけの殻だった。だが、監視カメラのモニターだけは何故か動いており、遠目ながらエントランスにいるコウスケの姿まで見えている。
「仕方ない……とりあえず、先に荷物を届けよう。このままじゃ、出前が冷めちゃうし。後で帰ってきたら、謝るしかないかな」
ハルトはそう言いながら、管理室入り口に置かれている来客名簿に自らの名前を書き記す。
「これで良し。宛名は……うわ、可奈美ちゃん部屋番号聞き忘れてる」
取り出したメモには、住所と名前、メニューの三つは記されていたが、住所にはマンション名だけで、部屋番号の記載はない。
「コウスケ。悪いけど、名前探してくれない? 日野原さんって名前だから」
「あ〜あ〜分かってる。 皆まで言うな」
コウスケはせっせと、郵便受けを探し始める。
ハルトは探す彼の後ろでスマホを操作し、可奈美へ連絡を入れた。
『もしもし』
「あ、可奈美ちゃん。今少しいい?」
『どうしたの?』
「今回の出前さ、もしかして部屋番号聞き忘れてない?」
『あれ? ごめん、私、メモに書いてなかったっけ?』
「書いてなかったよ。これ、やっぱり聞いていないパターンだね」
ハルトは頭を掻く。
「まあいいや。名前は分かってるから、虱潰しに探してみるよ」
『ごめん!』
ハルトがスマホを切ったところで、コウスケから声がかかる。
「いたぜ!」
「お、いた?」
「ホレ
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