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Fate/WizarDragonknight
出前
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を昇る代わりの魔力消費は、思った以上に体力を持っていった。

「いや、あの……この前、新しい指輪作ったんだよ。そしたらそれが、変な魔法というか……暴発したというかなんというか……」
「ほう。暴発。何の魔法なんだよ」
「強烈な臭いの魔法」
「うわ。それ何に使うんだよ?」
「用途募集中。それより、早く済ませてしまおう」

 七〇二号室は、ハルトたちが降り立った場所のすぐ近くにあった。
 コウスケも出前箱を下ろしたのを見て、ハルトは呼び鈴を押す。
 だが、電気のない呼び鈴など動くはずもなく、ハルトはドアをノックした。

「こんにちは。ラビットハウスです。ご注文のランチお届けに参りました」

 ハルトは言うが、返事はない。
 もう一度、ノックと呼びかけ。だが、ノック音とハルトの声が響くだけで、他には何の音もなかった。

「留守か?」
「出前を取って留守って……まあ、たまにいるけどさ」

 ハルトは口を尖らせた。

「まあ、このマンションだけ停電しているみたいだし、外に出ているのも無理ないけど」
「その割には、オレたちここに来るまでの間に誰とも会わなかったじゃねえか」
「確かに……」

 そもそも、とハルトは考えなおした。
 可奈美がラビットハウスで電話を受けたのは三十分前。
 つまり、三十分前はまだ停電になっていなかった可能性が高い。

「三十分間だったら、そんなに遠くまで離れないと思うけどな。そもそもそれだったら、携帯で連絡くれそうなものだし」
「さっき可奈美に電話してたろ? キャンセル連絡はねえんだよな?」
「そうなんだよね。どうしたものかな……ん?」
「どした?」

 ハルトはそこで、異変に気付いた。
 築年数はおそらく十年から二十年ほどのマンション。そんなに傷むはずのないのに、あちらこちらの壁に亀裂が入っている。ところどころには大穴も開いており、とてもではないが生活しやすいとは思えない。

「何か、嫌な予感がするな……日野原さん? 日野原さん!」

 冷や汗が止まらない。力強くドアを叩くが、返事はなかった。

「おいおい、なんか焦りすぎじゃねえか?」
「杞憂だといいんだけど……なあ、コウスケ。このマンション、ちょっと傷みすぎじゃないか?」
「そうか?」

 やがて。

「……えっ?」

 ドアが外れた。
 力を入れていたとはいえ、人間の拳で果たしてドアが壊れるだろうか。
 傾いたドアが、やがてハルトの方へ倒れてくる。慌てて避けたハルトは、コウスケと顔を見合わせる。

「これ……一体……」
「おいハルト。見ろよ、アレ」

 コウスケが室内を指差した。
 玄関から見える室内の様子に、ハルトは言葉を失った。

「何だこれ……?」

 それは、
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