令呪オークション その2
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く見えてきた。
我々の得た令呪の奪い合いが既に時計塔で発生しているのだろう。
我々がこの令呪を使いこなせない事まで見越した上で。
「こちらとしては、この国でのテロは許容できない。
これは絶対条件です」
「もちろん。
セルフギアススクロール用意いしましょうか?」
「そこまでです」
私、アンジェラ、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトではない声が響く。
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが苦々しそうな目で現れた第三者に対して呟いた。
「……化野菱理」
時代錯誤の和服美人は、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの敵意に満ちた視線を気にする事無く、私たちにたいして頭を下げた。
「時計塔の法政科よりまかり越しました、化野菱理と申します。
この件に関しましては、我々時計塔法政科が取り仕切らせていただきます。
これは、この国の政府及び在日米国大使館も了解しておりますのであしからず」
根回しが早い。
第四次聖杯戦争ではその隠蔽に暗躍したとは聞いていたが、動き出した時の影響力の大きさはここまでとは……
私が化野菱理に確認する。
「で、取り仕切る場合、六導玲霞の円満かつ安全な離脱はお約束していただけるのでしょうね?」
「もちろん、あなた方が令呪に支払った十億円もこちらでご用意いたしますとも」
こちらが言わなかった令呪の値段すら彼女が言ったことで、内部に内通者が居る事を私は確信した。
苦々しそうな顔でアンジェラが私の後を続ける。
「で、私たちに手を引けと?」
「それではそちらの面子が立たないでしょう。
ですから、この令呪をオークションにかけます。
掛け金のスタートは十億円からで、明後日深夜零時まで。
聖杯戦争参加者が欧州からこの国に来るギリギリの時間でしょうから。
それまで、六導玲霞の身柄はお願いしてよろしいでしょうか?」
私とアンジェラの無言を肯定ととらえた化野菱理はルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトを促して部屋から出て行った。
まるで、それまでの時間が嘘のように周囲の護衛たちからの報告が流れて来る。
これが魔術という奴なのだろう。
聞かせられない罵倒を呟きながら指示を出しているアンジェラに私は囁く。
「化野菱理は在日米国大使館と言いました。
多分ワシントンでの話はまだついていません」
「とても嫌な話だけど、内通者が居るわよ。
私の所にも、貴方の所にも」
なお、案の定化野菱理とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの行方を捕まえる事はできなかった。
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