第二章
[8]前話
「一緒に作るから」
「そうなんだ」
「ええ、けれどあそこ美味しいの」
「美味しいよ、じゃあ一回食べてみたらいいよ」
夫は妻に言った。
「試しに」
「ええ、それじゃあね」
梨沙もそれならと応えた、そうしてだった。
次の日夫が言った自分達の住んでいるマンションの最寄り駅の立ち食いそば屋にパートの帰りに寄った、そして。
かけそばを注文した、すると。
すぐに出て来てだ、食べてみて夜に家に帰ってきた夫とこの時も夕食を一緒に食べながらその蕎麦の話をした。
「パートの帰りにあそこのお蕎麦食べたわ」
「どうだった?」
「確かに安くてすぐに出て来て」
注文したらとだ、夫にハンバーグを食べつつ話した。おかずは他には野菜炒めがある。
「しかもね」
「美味しかったね」
「ええ、よかったわ」
夫に笑顔で答えた。
「あなたが毎朝食べるのもわかるわ」
「あれを一気にすすって」
そうして腹の中に入れてというのだ。
「それでだよ」
「お仕事行ってるのね」
「そうなんだ、ただね」
ここで夫はこうも言った。
「昔はああしたところで食べるのはよくないと思われていたそうだよ」
「立ち食いで?」
「座って食べるもので」
それが礼儀作法でというのだ。
「立って食べるのは無作法だってね」
「そうかも知れないけれど急いで食べる時は」
「ああしたお店がいいね」
「そうじゃないかしら」
「そう言われていても江戸時代からあったよ」
「ああしたお店は」
「あれはあれでいいよね」
夫は妻に確認する様に言った。
「そうだよね」
「私もそう思うわ」
「そうだね、じゃあこれからも」
「あそこで食べるのね」
「仕事に行く前はね」
その朝はとだ、夫は笑顔で答えた。そうして次の日もまた次の日もその立ち食いそば屋で蕎麦を立って食べるのだった。
朝食を食べない理由 完
2022・8・20
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