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夫が浮気したと思ったら
第二章

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「その人は」
「奥さんの写真ちらりと見たら何か女子プロレスラーみたいな」
「お隣の奥さんですね、その人も」
「すいません、人違いでした」
 女性はここで思わず席を立ってだった。
 立ったまま答えていた真奈美の前に来て深々と頭を下げた、彼女は真奈美の隣家の夫と彼が既婚者と言われず不倫をしてだった。
 妊娠してしまったのだ、それであらためてその隣人の方に抗議をして隣家は家庭が崩壊してそのうえでだった。
 夫は実業家どころかアウトローの輩で一家で麻薬の密売をして儲けていたとわかった、それで夫婦共々捕まったが。
 全てが終わってからだ、夫の清秀はこの事件のはじまりから終わりまで話してくれた妻に対してどうかという顔で言った。外見は彼女と娘が言った通りだ。
「僕が浮気って」
「有り得ないって私も万土香も確信していたわ」
「こんなおっさんがどうしてもてるんだよ」
 太った脂ぎった顔で言った。
「加齢臭プンプンなのに」
「自分で言うの?」
「言うよ、そんなこと考えたことないよ」
「だから私もおかしいと思ったのよ」
 真奈美にしてもだ。
「それで会いに行ったらね」
「お隣さんのことだったと」
「そうよ」
「おっちょこちょいな話だね」
「本当にね」
「それでその人の妊娠は」
「違ったわ、つわり来たと思ったら」
 それがというのだ。
「ただ胃が荒れてただけだったわ」
「その話もおっちょこぢょいだね」
「そうよね、ただお隣さんがとんでもない人だったことは確かね」
「浮気していた以上にね」
「麻薬なんて売っていたなんて」
「全くだね、けれどこれでだね」
「一件落着よ、悪い人達は捕まって妊娠もしてなくて」
 それでとだ、妻は夫に話した。
「よかったわ」
「そうだね、しかし本当におっちょこちょいな人だね」
「そう思うわ、私も」
 事件の発端の女性にはこう思うばかりだった、夫婦は娘と共に自分達はそんなおっちょこちょいなことはしないでおこうとも。そして悪いこともしないことだとも思ったのだった。


夫が浮気したと思ったら   完


                   2022・8・19
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