第76話 演習 その2
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し、次の宇宙艦隊司令長官はほぼ確定ということで、しばらく第四四高速機動集団は冷や飯を食うかもしれない。
それで帝国領侵攻前にそれを阻止したり干渉できるだけの権限を、俺が持っているかと考えると……非常に難しいかもしれない。爺様は第五艦隊司令官になるかまでは分からないが、中将への昇進は間違いない。軍歴から言っても功績から言っても、むしろ中将にならない方が問題ある。そして爺様のことだから扱き使える便利屋参謀である俺を手放す考えはたぶんないだろう。そのくらいの仕事はしてきた自負はあるつもりだが、ということは仮に第五艦隊司令官になった場合、俺は良くて副参謀長……准将というところだろう。
フォークのようにロボス閥ではないし、政治家にすり寄ってゴマすりしたいわけでもない。これまでの経歴からすれば、俺は統合作戦本部内勤のエリートとしては見られない。そもそも後方勤務で出世できるのはスペシャリストだから、どれにも中途半端な俺は、何処に行っても役に立つことはないだろう。結局はシトレという樹の、ビュコックという枝の、小さな葉っぱでしかないという事か。
埒もないことを単身者用士官宿舎でグルグルと考えているのは健康に悪い。前世、仕事に行き詰まって、鬱状態になった時、少ない友人や親の勧めで小旅行に出かけたことがある。それで仕事が解決できたわけではなかったが、気分転換になったのは事実だ。それに士官学校に入った一六以来、旅行は士官学校のあるテルヌーゼンへの惑星内小旅行位なものだ。二週間程度と考えていた休暇がその倍となったので、俺は爺様に長期休暇を願った。
「まぁ、少し働かせすぎたのも確かじゃしな」
貴官のいない間はファイフェルに任せようとの台詞と共に、申請書はファイフェルを通じて戻ってきた。妙に申請書の両端が歪んでいたのは、きっと気のせいだろう。モンシャルマン参謀長も久しぶりに家族サービスに勤しむ上、モンティージャ中佐も長期休暇を申請しているので、司令部には爺様とカステル中佐とブライトウェル嬢が残ることになる。司令部に残るといっても事実上は留守番や電話番といったところだ。かくいう俺も、爺様とファイフェルが休暇に入る二週間後から、参謀長と司令部に詰めることになる。
そして空いた二週間。俺はボロディン家に不義理して一人旅に出ることにした。一緒にハイネセンに戻ってきたグレゴリー叔父も、レーナ叔母さんもイロナもラリサも、快くとは言い切れないが送り出してくれた。流石に宇宙船事故などがある恒星間旅行は難しいと考え、惑星ハイネセン内の観光地を総浚いして……ハイネセンポリスとは惑星内核を挟んで正反対の、南半球。やや亜熱帯地域に属するサームローイヨートにある、海岸のリゾートホテルを選んだ。
一〇月でこれから初夏を迎える季節。学生や若いカップルなどは学期中な
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