第76話 演習 その2
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でいるのだろうか。それともちょっと大きくなり過ぎたと判断するだろうか? だがもう一人、此処には登場人物がいるはずだ。
「ちなみにサブリーダーのマロン少佐の経歴はご存知ですか?」
「……ちょっと待ってくれ。ジェフ」
「少々お待ちを……あぁ、しまった。こっちかもしれない」
なんでコナリー准将の端末が軍個人の経歴を洗えるかと言えば、査閲部のメンバーは基本的に部隊査閲する立場上、それなりの経歴がありますよと保証書のように誇示することがある。勿論軍が極秘とする任務に就いている場合は白塗りされるが、これだけの経歴の人ならば叱責されても仕方ないと納得させる必要があるからだ。
「マロン『大尉』の前任は第三艦隊旗艦部隊所属、戦艦ピウケネスの航法主任です。偶然で穿った見方をしてはいけませんが」
ロボス中将が感づいたのか、それともマロン少佐自身の考えか。今更というところだし、問い詰めるなんてまったく意味のないことだ。
「世の中、物事が順調に上手くいくことなど、そうそうないものじゃ」
爺様はジャムを紅茶に入れてかき混ぜつつ、そう呟いた。
「儂の過去の経験によればね……」
それから第四四高速機動集団と第四七高速機動集団は、一〇月一二日の訓練終了日まで対抗演習をすることはなかった。第四四高速機動集団は盛大に航行用燃料を消費し、三桁単位で航法・操舵関係者を過労と心労に追い込みつつも、最終段階では集団としての陣形変更をそれなりにスムーズに行えるまで成長していた。
一日の完全休養の後、一〇月一四日。メールロー中佐の査閲チームから訓練について簡易評価を受けた。結果としては『制式艦隊と比肩しても劣らない』という高速機動集団としては最上級の評価となった。これが高速機動集団に今後どう影響するかは今のところは分からないが、とにかく大きな事故もなく訓練は終了し、報告書と今後の課題を書き上げつつ集団は一〇月一九日にハイネセンへ帰投した。
◆
ハイネセンに帰投して、統合作戦本部と宇宙艦隊司令部への報告を済ませると、第四四高速機動集団には一ケ月の休養が与えられることになった。訓練前に大規模な修繕作業は終了しているとはいえ、宇宙空間で小惑星やデブリ相手に戦ってきた艦艇達の肌は荒れているし、心臓に障害が出ている船もある。将兵も大半がエル=ファシル奪回作戦前から長期にわたって宇宙空間におり、演習によって部隊再編成も済んだこと、同盟末期のように戦力の危機的状況下にないことからも、第四四高速機動集団に長期の休養があっても良いと必要と判断された。
穿った見方をすれば、シトレの計算は自分の足自身によって掬われたわけで、次に戦線投入するにしても他の部隊に任されることになるし、その余裕があるということだろう。ロボスだってもう八年近く中将を経験している
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