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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第76話 演習 その2
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してやっていくだけの将器をもっているから、本当に足りないのは目に見えた武勲だけだ。大規模艦隊戦闘が行われない遠征でまずは部隊として初陣し、あと一・二度前線参加すれば間違いなく武勲を上げるだろう。そしてグレゴリー叔父も中将へ昇進できる。

 以上のシナリオ通り進めば、シトレは被害を自軍にほとんど出すことなく近いうちにビュコック・ボロディンの両『中将』を率いることができる。その機会としてのダゴン星域攻略。戦略的にはエル=ファシル星域再入植環境を整えることで、出兵の道義・理論としては間違いではない。だがかなり恣意的で軍内政治的な行動だ。付き合わされる兵士のことを考えれば、褒められた話ではない。間違いではなくてもどうかと俺は個人的には思う。

 そこまで考えた上で第四四と第四七は同じ場所での訓練を行うことになった。しかも第四七に大きなハンデを付けた対抗演習も行わせることも含めて、だ。第四四の動員はほぼ決まっていて、その第四四に第四七がそれなりに一撃を喰らわせるだけの能力=前線戦闘においてまず味方を撃たない能力はあることを証明させたかった。

 だが第四四は想定以上の対応能力を見せ、第四七は想定以上の大敗北を喫した。ハンデを付けてもこれなら、『ちょっと前線で戦うには時間が必要ではないか』と誰もが思うだろう。とても近々にダゴン星域に連れていくには難しいのではないか、と。

「そちらの査閲チームのリーダー、メールロー中佐は統合作戦本部勤務が長い人だ。悪い人物ではないし、シトレ閣下に含むところがあるわけではない。含むところがあるわけではないが……ロカンクール『少将』の副官を務めていたことがあったらしい」
 グレゴリー叔父がどこから手に入れたかだいたい想像がつく話を漏らす。
「開始五分前に我々が第四四の左後背射撃位置に付けた段階で、ビュコック閣下に中佐が与えたヒントは道義レベルを超えていないと確証できる。私は自分の手腕に驕っていた。逆に言えば第四四高速機動集団を侮っていた。それに足を掬われた」
 申し訳なかった。とグレゴリー叔父は爺様に頭を下げた。コナリー准将も同様だ。
「……まぁ、ジュニアに何か旨いものをご馳走してやるんじゃな。シトレ閣下には儂からちょっと言っておく」

 事前にその旨を爺様に話していればどうだったか。それで爺様が対抗演習の手を抜いただろうか? それはないだろう。むしろ爺様はこういうところで手を抜くようなことをさせない。ダゴンへの遠征も理としてはわかるが、シトレの焦りにも見えるような工作も爺様の好むところではない。わかるから爺様にシトレは話さなかったのだろう。そうやってでも軍内部で出世していかなければならないのはわかるにしても。

 そしてメールロー中佐も全てを知っていたわけではないだろうが、嫌がらせが上手くいったとほくそ笑ん
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