第76話 演習 その2
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。ボロディン少佐。ビュコック司令官閣下がお呼びです。司令官公室迄ご出頭ください」
「わかった。中佐、どうやらさっそく四者面談のようです」
「ボロディン少佐」
カステル中佐の椅子に両足を延ばしたままのモンティージャ中佐は、軽い声で部屋を出ていこうとする俺の背中から声をかけてくる。
「バグダッシュの奴も言ってたが、俺の目から見ても君は矛盾の塊で、正直不気味にすぎる。だが少なくともグレゴリー=ボロディンに対して恥じることは何もない。今の第四四高速機動集団の基礎を作ったのは、他の誰でもない君だ。背を丸めるな。胸を張れ。胸を張って勝ったと言ってこい」
フランクな顔つき、営内とは言えない格好だが、座ったまま敬礼する中佐の目は糸のように細く、まったく笑っていなかった。
◆
「おお、ジュニア。休んでいる時に悪いの」
四人掛けのソファの出迎え側に座っていた爺様の声に、客側に座っていた二人……グレゴリー叔父とコナリー准将は、敬礼する俺に座ったまま小さく答礼してきた。本来なら訪問先の士官が敬礼していたら立ち上がって答礼するべきだろうし、爺様も叔父達の非礼を責めるべきなんだろうが、そうしないということは公式の場ではなく私的な会合という意思なのだろう。
何しろこの部屋にモンシャルマン参謀長もファイフェルもいないから、これはかなり内輪の話ということになる。爺様が自分の隣の空いている席をポンポンと叩いているのがなによりの証左だ。
「コナリー准将閣下、ご無沙汰しております」
「御曹司に軍艦の中で閣下と呼ばれる日が来るとは感慨深いですなぁ。ついこの間、アントン先輩のご自宅でチキンフライパーティやっていたはずなのに」
ようやく見慣れる位に伸びてきたキューバ髭を撫でつつ、コナリー参謀長はボロディン家を訪れる時の笑顔で応えてくれた。やっぱり子供の頃から自分を見知っている相手はいろいろとやりにくいが、血縁ではないにしても親しい先達に会うのは悪い気分ではない。
「さて取りあえず『身内』だけとなったわけじゃが、グレゴリー。シトレ中将から何か話があるのかの?」
「年明け早々、できれば一二月に再出兵し、ダゴンの星域支配圏を優勢に確立したい、とのことです」
コンコンとティースプーンでソーサーを叩きつつ、グレゴリー叔父は爺様の問いにあっさりと答えた。俺が思わず目の前のコナリー准将に視線を向けると、准将も軽く二度頷き返してくる。
というか腹黒親父め、一体何を考えている。三個艦隊も動員したイゼルローン攻略が失敗に終わったばかりのタイミングで、すぐさま出兵を企図するというのはあまり常識的ではない。だいたい国防委員会も最高評議会も、統合作戦本部ですら認めるとは思えない。
取りあえずは頭の中に航路図を描きつつ、一度思考を整理するために、携
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