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伴装者番外編
シンデレラストーリー(純クリ)
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あたしには、小さな頃から見てる悪夢がある。

(あぁ、またこの夢か)

あたしは息を吐いて、その光景を見ていた。夢とわかっていても、あたしがどうこうできる夢じゃない。あたしは遠くからその光景を見てるだけだ。

悪夢と言っても、あたしに何か危害が加えられるわけでもホラーな展開が待っているわけでもない。ただあたしの、もう絶対に叶わない幼い頃交わした約束が破られるだけの夢だ。

遠くにいるのは、小さなあたし。色んな色の生地をつなぎ合わせた拙い手作りのドレスを手に持って、目をきらきら輝かせ鏡の前でくるくる回っている。この後起きる展開も知らないで呑気に待ち人を待つあたしのその姿に吐き気が出そうになる。

でも、目を逸らすことはできない。まるであたしの体は固定されてるかのようにその場から動けないからだ。たとえどんなにやめてくれと泣き叫んだところで、あたしの願いをこの夢が聞いてくれたことなんてない。あたしはただ、涙を枯らしたこの瞳で約束が果たされない光景を延々と見せられるのだ。

『クリスちゃん』

その声に、幼いあたしだけじゃなくあたしまで反応してしまった。……どうせ、この先の展開なんて変わらないのに。あたしはまだ、期待してるんだ。彼が、迎えに来てくれることを。

『ジュンくん!』

声のした方向には、金髪の幼い少年が立っていた。彼はあたしの幼馴染で、あたしの王子様で……もう二度と会うことなんてできない人だ。ジュンくんはあたしを見て微笑むと、あたしに手を差し伸べた。

『踊ろう、クリスちゃん』
『うん!』

幼いあたしとジュンくんは、拙いステップを踏みながら二人だけのダンスホールで踊り始める。子どもだから、型なんてわかるわけがない。専門の奴から見たら無茶苦茶で、ひどいダンスだって酷評されるのはわかりきってる。それでも、幼いあたしとジュンくんの顔は楽しそうで、二人だけの世界を作っていた。

……けど、誰も邪魔が入らないはずの世界に横やりを入れるように、零時を告げる鐘が鳴る。鐘が鳴った途端に周りの景色は崩れていき、幼いあたしとジュンくんはいとも簡単に引き裂かれる。

嫌だ。やめて。お願い、あたしを一人にしないで。お願いだから──

「あたしから、もう何も奪わないでよぉ……!」

あたしは真っ暗になった空間で、一人泣き崩れていた。
涙なんて、とうに枯れてしまったと思ってた。涙を流さないあたしは強くなれたと思ってた。……いや、そう思いあがってたんだ。本当は、弱いあたしから目を背けてただけだったのに。

自分でも気づかないうちにあたしの心は限界を迎えてたらしい。あたしは夢の中なのに子どもみたいに泣きじゃくっていた。どうせ誰もあたしを慰めてくれやしないのに。

「大丈夫だよ」

その優しい声と一緒に、暖かい
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