第三十二話 泳いだ後でその五
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「ヒステリックですぐに喚いて浪費家で図々しくてね」
「酷い人だったの」
「まともに働かないで家のお金で遊んでばかりで」
「育児放棄して」
「自分だけの人でね」
そうであってというのだ。
「自分以外の生きものは皆大嫌い」
「自分だけが好きで?」
「それで底意地も悪くてね、生きていてずっと遊んでいて」
それでというのだ。
「パチンコとかお買いものばかりで」
「遊んでばかりで」
「まともに本も読んだことなくてね、テレビばかり観て」
「テレビも自分が好きなものばかり?」
「他の人が観ていたら横できいきいお猿さんみたいに喚いて」
「自分が観るだったのね」
「ええ、そんな人でね」
それ故にというのだ。
「人生経験もなくて」
「知識も教養もなの」
「まともに学校も行ってなかったしね、大正生まれで尋常小学校を出て」
「それからなの」
「当時はそれが普通だったけれど」
学歴としてはだ、もっとも学歴だけで知識や教養や人格が決まる訳ではない。どんな大学を出ても愚か者は愚か者だ。
「それでもね」
「ずっと遊んで好きなことして」
「言うなら人生の修行を全くしてこなかったのよ」
「そんな人は子育て出来ないのね」
「だからそんな人を育てたのよ」
「そのどうしようもない人を」
「そうしたのよ」
こう一華に話した。
「だから親はね」
「ちゃんと人生の経験を積んで」
「知識も教養も磨いてね」
「それで子育てをするものなのね」
「そうよ、とはいってもね」
母は一華に少し苦笑いになって述べた。
「かく言うお母さんもまともな経験はね」
「ないの?」
「自信ないわよ、自分の人生に自信があるか」
それはというと。
「そう聞かれるとね」
「ないのね」
「全くね」
こう一華に答えた。
「ある筈ないわ」
「そうなのね」
「知識や教養もね」
こうしたものもというのだ。
「そんなにあるか」
「そう聞かれるとなのね」
「ないわよ」
「そうなのね」
「そう、けれどね」
「それでもなのね」
「その中でもね」
一華にさらに話した。
「出来る限りね」
「やっていくのね」
「そうよ、子供が生まれたら」
それでもというのだ。
「ちゃんとね、自分の知ってる限りの経験と知識と強要を使って」
「子育てするものなのね」
「そうよ」
「それでお母さん今私がなのね」
「何か恥ずかしいもの隠してるでしょ」
その自分の経験から察して言うのだった。
「あんたみたいな年齢だとあるのよね」
「そうなのね」
「だから聞かないわ」
「そうしてくれるの」
「ええ」
そうだと言うのだった。
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